教員に役立つ心理学シリーズ①『頑張れ』が子どもを追い詰めることもある

教師のお仕事

【40代教員の退職カウントダウン168:退職まで残り2年10か月】


はじめに その一言、脳はどう受け取っているか

「頑張れ」

教員であれば、日常的に使う言葉です。
励まし、応援、支援——そのつもりで発しているはずです。

しかし心理学の研究は、こう問いかけます。

その言葉は、本当に“やる気”を高めているのか?

本記事では、教員に役立つ心理学シリーズとして、心理学・脳科学の知見をもとに子どものやる気が高まるメカニズムと、逆に下がる言葉の特徴を解説します。

私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯


やる気は「自己決定感」で生まれる

心理学には自己決定理論(Self-Determination Theory)という考え方があります。

人が自発的に行動するためには、次の3つが必要だとされています。

  • 自律性(自分で決めている感覚)
  • 有能感(できるという感覚)
  • 関係性(認められている感覚)

このうち、特に重要なのが「自分でやっている」という感覚(自律性)です。

ここに、「頑張れ」の落とし穴があります。

特に重要なのが「自分でやっている」という感覚(自律性)

①「頑張れ」でやる気が下がる心理的リアクタンス

心理的リアクタンス

〜心理的リアクタンス〜

心理学には心理的リアクタンス(Reactance)という概念があります。

リアクタンスとは、「自由を制限されたと感じたとき、人はそれに反発する」ということ。

つまり、「やりなさい」や「頑張れ」といった言葉は、

👉「やれ」という圧力として受け取られることがあるのです。

■教室で起きていること

子ども:「そろそろ、やろうかな…」
教師:「頑張れ!」

👉結果:タイミングによってやる気が消える

これは怠けではなく、脳の防衛反応なのです。

頑張れが危険なタイミング

心理学的に最も注意が必要なのは、

👉すでに努力している状態の子どもです。

このとき「頑張れ」は、

  • 自己決定感を奪い
  • 有能感を下げ
  • プレッシャーを与える

結果として、「自分の努力がまだ足りない」と感じさせる言葉になります。

大切なのは心理的安全性なのです。


②ご褒美が逆効果になるアンダーマイニング効果

〜アンダーマイニング効果〜

心理学では、外から与えた報酬が、内発的なやる気を下げる現象をアンダーマイニング効果と呼びます。

■実験で分かっていること

ある研究によると、学習に対するご褒美を約束された子どもは、短期的には成績上昇の効果がありますが、長期的に見るとやらなくなることがわかっています。

なぜなら、行動の理由が変わるからです。

  • 「楽しいからやる」
    → 内発的動機
  • 「ご褒美のためにやる」
    → 外発的動機

そして一度外発的になると、

👉ご褒美がないとやらなくなるということがわかっています。これがアンダーマイニング効果です。


③「頭がいいね」も危険 固定的マインドセット

 固定的マインドセット

〜固定的マインドセット〜

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエックは、

  • 固定的マインドセット
  • 成長マインドセット

という概念を提唱しました。

これは「能力を褒めることで、かえってチャレンジ心を奪ってしまう」という心理です。

■言葉の違いが生む影響(子どもの受け取り方)

頭がいいね…能力は固定されている

頑張ったね…努力次第で変動する

■結果

  • 「頭がいいね」→失敗を避ける
  • 「頑張ったね」→挑戦を続ける

つまり、評価の言葉が、学び方そのものを変えてしまうのです。


やる気を引き出す教師の言葉

〜3つの心理学的アプローチ〜


① 自律性を守る(自己決定理論)

× 頑張れ
○ どうする?どっちからやる?

👉選択肢を与えるだけでやる気は上がる

自律性を守る(自己決定理論)

② 有能感を高める(成長マインドセット)

× 頭がいいね
○ 工夫してるね
○ 前よりできてるね

👉変化に注目する

(成長マインドセット)

③ 関係性をつくる(承認)

× まだ足りない
○ 頑張ってるね

👉「今」を認める


教師は「やる気を生む環境」をつくりたい

心理学から見えてくるのは、シンプルです。

  • やる気は押し込めない
  • やる気は命令で生まれない
  • やる気は「自分でやる」と感じたときに生まれる

つまり教師にできるのは、

やる気を生み出すことではなく、やる気が生まれる条件を整えることなのです。

やる気が生まれる条件を整える

たった3文字で変わる

「頑張れ」
ではなく

「頑張ってるね」

たった3文字の違いですが、

  • 指示 → 承認
  • 圧力 → 安心

に変わります。この違いが、きっとクラスの子どもの行動を変えます。

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