【40代教員の退職カウントダウン210:退職まで残り2年6か月】
はじめに
「第一志望、E判定だった……」
先日の次男のセリフです。高校生にとって、模試の結果はかなり大きな意味を持ちます。
A判定なら安心し、C判定なら不安になり、E判定なら、「もう志望校を変えた方がいいのかな」と思ってしまう。
保護者や教員も同じかもしれません。
しかし、大手予備校の大学入試講義を聞いていて、印象に残った言葉の一つが、「模試判定だけで志望校を諦めないでほしい」という話でした。
では、模試のA〜E判定をどう考えればよいのでしょうか。
シリーズ「進路指導ができる教員になろう」。
第5回は、進路指導で模試をどう見るかについて考えてみます。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯】
シリーズ最初の記事はこちら【大学入試は私たちの頃とこんなに違う――教員が知っておきたい現在の大学受験】

そもそも模試の「判定」とは何なのか
まず講師が言っていたのは、模試判定は「あなたが合格するかどうかの予言」ではないということです。
講師によると、模試では、今回の得点、偏差値、志望者の中での順位、過去の入試結果、志望大学の配点、などから総合的に合格可能性を推定するものだそうです。
例えば河合塾の模試では、志望大学の入試科目の配点を反映した「評価偏差値」などを使ってA〜Eの5段階で評価しているそうです。国公立大学では、共通テストと二次試験の配点割合も加味した総合評価を行う仕組みがあります。
つまり、同じ偏差値でも、大学によって判定が変わることがあるわけです。

だから判定は、「この子の学力はAレベル」「この子はEレベル」という評価ではありません。
あくまで、「今この時点で、この大学を受けた場合の位置」を示しているものなのです。
E判定は「不合格確定」ではない
講師はE判定は「不合格確実」ではないと言います。
E判定ということは、現時点では志望大学との距離がかなりあるという重要な情報です。
そこを正面から受け止める必要があります。

特に高校3年生では、夏から秋、秋から冬にかけて大きく成績を伸ばす受験生もいるそうです。
C・D・E判定から合格する受験生も毎年いるとのことでした。
また、国公立大学の場合は、共通テストと二次試験の配点によっても状況が変わります。
例えば、共通テストで多少出遅れても、二次試験の比重が大きく、自分の得意科目を生かせる大学なら逆転できる可能性があります。
逆にA判定であっても、本番で失敗すれば不合格になります。
だから模試は、「合格・不合格を決めるもの」ではなく、「現在地を知るもの」と考えるのがよいのだと思います。
「A判定だから安心」でもない
今回の講義では、面白い表現がありました。
講師は、「A判定のAは安心のAではなく、AttentionのAくらいに思っておいた方がいい」と話していました。

もちろん、実際にAがAttentionの略という意味ではありません。
「A判定だからといって油断しないでほしい」という比喩です。
これはとても分かりやすいと思いました。
模試でA判定を取ると、「もう受かるだろう」と思ってしまいがちです。
でも大学入試は、模試の翌日に行われるわけではありません。
そこから本番まで数か月ある場合もあります。
自分が勉強を止めても、周囲の受験生は勉強を続けます。

つまり、判定は固定されたものではなく、AからCになることもあれば、EからCへ上がることもあります。
模試の判定を見るときには、「結果」ではなく、その時点のスナップ写真くらいに考える方がよいのかもしれません。
模試で本当に見るべきなのはアルファベットではない
では、模試の結果が返ってきたら何を見るべきなのでしょうか。
どうしても目が行くのは、A・B・C・D・Eです。
でも、本当に大切なのはその周りにある数字です。
例えば、
どの教科が取れているのか。
どの単元で落としているのか。
志望者の中で何位なのか。
合格ラインまで何点足りないのか。
正答率が高い問題を落としていないか。
こうした情報です。
大手予備校では個人成績表で、志望校別の合格可能性評価だけでなく、志望者内での順位などを確認できるようになっているそうです。

例えばE判定でも、D判定と出るまで「あと100点必要」なのか、「あと10点程度」なのかでは意味が違います。
そして10点なら、数学の計算ミスを減らす。英単語を増やす。国語の古文を伸ばす。といった具体的な作戦に変えることができます。
つまり、「Eだった」で終わらず、「あと何が必要なのか」に変換することが重要なのです。
苦手科目を全部得意にする必要はない
講義では、学習戦略についても興味深い話がありました。
それが、「苦手科目を普通にすることに時間を使いすぎない」という考え方です。
これは、「苦手科目は捨てていい」という意味ではないようです。
講師の話では、「みんなが取れる基本問題を落とさない程度まで引き上げる」ことが大切なのだそうです。

例えば数学が苦手だからといって、得意科目と同じレベルまで引き上げようとすれば、膨大な時間がかかります。
それよりも、基本問題を確実に取り、大崩れしない。その上で得意教科を伸ばす。という考え方です。
ただし、これは当然、志望大学の配点によって変わります。
数学の配点が非常に高い学部なら、数学を避けることはできません。
だからこそ、「苦手だから頑張ろう」だけではなく、志望大学の配点から逆算して勉強するという視点が必要になります。
「みんなができる問題を落とさない」
もう一つ、講義で印象に残った言葉があります。
それが、「難しい問題より、みんなができる問題を落とさない」という言葉です。
受験生はどうしても、難問が解けるようになりたい。応用問題を攻略したい。と思います。
しかし入試では、難しい問題は周りの受験生も解けないことがあります。
それより痛いのが、正答率の高い問題を、ケレスミスなどで落としてしまうことです。
講師は一般選抜について、「満点から少しずつ点を失っていく試験だと考えるとよい」という趣旨の話をしていました。

これはなかなか面白い考え方だと思います。
解けるようになる攻めの姿勢も大事だが、失点しないように守る姿勢も大事であるとのこと。
教員が「E判定だから無理」と言ってはいけない理由
子どもが、「この大学に行きたい」と言ったとき、模試を見るとE判定。
大人としては、「現実を教えなければ」と思うかもしれません。
しかし、「E判定だから無理」と伝えることと、「今のままではかなり厳しい」と伝えることは、似ているようで大きく違います。
前者は可能性を閉じます。後者は現在地を伝えています。

例えば、
「今はE判定だね。合格ラインまであと何点くらい必要なんだろう?」
「二次試験の配点はどうなっている?」
「得意科目でどれくらい取り返せるかな?」
「次の模試までにどこを伸ばそう?」
と一緒に考える。
これなら現実を伝えながら、次の行動につなげることができます。
進路指導で必要なのは、根拠のない楽観でも、可能性を閉じる悲観でもないのだと思います。
志望校を下げる判断も、もちろん必要
ここまで読むと、「どんなにE判定でも第一志望を受け続ければいい」という話に聞こえるかもしれません。
もちろん、そうではありません。
受験直前になっても合格可能性が非常に低い。
他に本人が納得できる大学がある。
共通テストの結果を踏まえて出願校を変更する。
そうした判断が必要になることもあります。
大切なのは、「Eだから下げる」のではなく、複数の情報から本人が判断することではないでしょうか。

模試は「判定表」ではなく「作戦表」
今回、模試についての話を聞いて、私は、模試の見方を少し変えた方がいいと感じました。

Aだから喜ぶ。Eだから落ち込む。それだけでは、せっかく模試を受けた意味がありません。
捉え方が変われば模試は、「合否判定表」から「次の作戦を考える資料」に変わります。
これは進路指導でも同じです。
教師や保護者が、「Aだから大丈夫」「Eだから無理」と判定するのではなく、「この結果を次にどう生かす?」と問いかける。
その方が、子ども自身が自分の進路を考える力につながるのではないでしょうか。
可能性を広げながら、現実も見る
大人は、子どもの夢を応援したい。でも現実も伝えなければならない。
この二つの間で悩むことがあります。
模試判定は、その典型かもしれません。
私は今回の講義を聞いて、その二つは両立できるのではないかと思いました。
E判定の子に、「大丈夫。絶対受かる」と言う必要はありません。
でも、「無理だから諦めよう」と言う必要もありません。
「今は厳しい。でも、何が足りないか一緒に見てみよう」と言うことはできます。
進路指導をする教員や保護者として、判定で子どもの可能性を決めるのではなく、判定を使って次の一歩を一緒に考える。
そんな模試の見方を大切にしたいと思います。

次回は、「大学受験にはいくらかかる?――学費・下宿・入学手続きまで教員も知っておこう」
について考えてみたいと思います。
※本記事は、大手予備校が主催する大学入試に関する講義で学んだ内容をもとに、教員の立場から整理したものです。模試の合格可能性判定の算出方法や基準は、予備校や模試によって異なります。実際の進路判断では、模試判定だけでなく、大学の最新の募集要項、配点、過去問など複数の情報を確認することが大切です。



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