【40代教員の退職カウントダウン217:退職まで残り2年6か月】
はじめに
2025年、名古屋市の教員による盗撮事件が大きく報道されました。
児童を盗撮した画像などをSNS上のグループで共有していたという、学校への信頼を大きく揺るがす事件です。

私にとって、この事件はニュースの中だけの出来事ではありませんでした。
逮捕された教員の一人が、大学時代の同級生だったからです。
親しい友人だったわけではありません。ただ、少し面識があり、共通の友人がいて、同じ授業を受けるなど接点のある人でした。
だからこそ、報道で名前を知ったときには本当に驚きました。
大学時代の彼の様子から、「将来、児童を盗撮し、これほど大きな事件になる」などと想像したことは当然ありませんでした。
だからこそ、私は盗撮事件を、「一部の異常な人が起こす、自分とは関係のない事件」として片付けてはいけないのではないかと思うようになりました。
そんなときに手に取ったのが、斉藤章佳さんの『校内盗撮』です。
読み始める前は、「教員による盗撮事件の実態を扱った本なのだろう」くらいに考えていました。
でも、実際に読んでみると、それだけではありませんでした。
なぜ人は盗撮を繰り返すのか。
加害者は、自分の行為をどのように正当化していくのか。
子ども同士でも、盗撮の加害と被害は起こり得る。
そして学校は、何を変えれば被害を防げるのか。
教員として考えなければならない問いが次々に出てきます。
私はこの本を、教員にこそ一度読んでほしい本だと感じました。
そこで今回は、「教員にこそ読んで欲しい本シリーズ」としてこの本を取り扱い、
① 盗撮する人の心理と自己正当化
② 子どもも加害者になる――1人1台端末時代の校内盗撮
③ 個人のモラルに頼らない――学校の仕組みで盗撮を防ぐ
という3つの視点から、特に印象に残ったことを紹介します。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこちらの記事で【私はなぜ教員を辞めるのか――教員不足で仕事が増え続ける学校】
合わせて読みたい「先生方にぜひ読んでほしい本シリーズ」
私自身が実際に読んで、ぜひ先生方にもおすすめしたい本を集めました
【読書大好き教員が紹介!先生方にぜひ読んでほしい本シリーズ】

① 「なぜそんなことをするのか」に答えてくれる本
盗撮事件のニュースを見ると、「なぜそんなことをするのか」と感じます。
私自身もそうでした。「普通の感覚では理解できない」「特殊な人がすることなのだろう」と考えてしまいます。
でも、この本を読んで一番印象に残ったのは、加害者は、自分の行為を自分なりに正当化していくという点でした。
「見るだけなら」
「保存するだけなら」
「誰にも見せなければ」
「相手は気付いていない」
「直接触ったわけではない」
そうやって、少しずつ自分の中で境界線を下げていく。そこに怖さがあります。

私はこの部分を読んで、大学時代に少し面識のあったあの人物のことを改めて考えました。
当時の様子だけを見て、「将来こうなる人だった」などと判断することはできません。
だからこそ、「危険そうな人を見抜けば防げる」という発想だけでは足りないのだと思いました。
本書は、なぜ一線を越えるのかを知ることで、どう防ぐかを考える本です。
この視点は、子どもを守る教員にとってかなり重要だと思います。
② 小中学校の教員にこそ読んでほしい理由
本書を読んでいて、「これは大人だけの問題ではない」と強く感じた部分があります。
それが、子ども同士の盗撮です。
小中学校でも、保護者連絡用として私物スマホの持ち込みを許可している学校も増えてきました。
ただ、多くの学校が学校生活中に自由に使わせているわけではありません。
だから「スマホによる盗撮は、自分の学校では起きにくい」と思うかもしれません。
でも、今の学校には、1人1台の学習用端末があります。

iPad、Chromebook、タブレットPC。ほとんどにカメラが付いており、ネットに繋がっています。
しかも学校では、理科で植物を撮る、体育で動きを撮る、作品を記録する、校外学習で写真を撮るといった活動が日常的に行われています。
つまり、「カメラを使うこと」自体は、学校生活の中でごく普通になっているのです。
また、最近はSNSや保護者の影響から写真を撮ることや撮られること自体に抵抗を感じる子は少ないです。だからこそ、子ども同士の盗撮被害が増えてきているのだといいます。
「ふざけて撮った」で済ませてはいけない
子ども同士なら、「悪気はなかった」「ふざけて撮った」「みんなで笑っていただけ」ということもあるでしょう。
でも、撮られた側にとっては深刻な被害になり得ます。
本人の同意なく撮る行為は、単なる悪ふざけでは済みません。
さらに怖いのが、その画像を送りあうことに今の子どもたちは抵抗感がないということです。
この本を読んで、私は情報モラル教育の中で、「撮らない」だけではなく、「送らない・共有しない」まで教える必要があると改めて感じました。

学習用端末も「使い方次第」
学校が貸与した端末だから安全。そう考えたくなります。
でも、端末はあくまで道具です。使い方を間違えれば当然加害の道具にもなります。
だからこそ、「スマホは禁止だから大丈夫」では済まない。
『校内盗撮』を読むと、盗撮問題が「教員不祥事」だけではなく、情報モラル、生徒指導、性教育、学校安全すべてにつながっていることが見えてきます。
③ 「悪い人を出さない」だけではなく「起きにくい学校をつくる」
この本を読んで、もう一つ考えさせられたのが、学校として何をするかという視点です。
盗撮事件が起きると、「教職員の倫理観を高めよう」「研修を徹底しよう」となります。
もちろん必要です。
でも、それだけでは十分ではありません。
本の中の言葉を借りれば、個人の良心が崩れたときに止める仕組みが必要だからです。

例えば、
教員が私物スマホで児童生徒を撮影しない。
撮影は学校端末を使う。
画像の保存場所を決める。
不要な画像を削除する。
更衣場所やトイレ周辺の死角を点検する。
児童生徒が端末を使ってよい場面を明確にする。
こうした仕組みが必要です。
「この先生なら大丈夫」では防げない
私が特に考えさせられたのはここです。
名古屋の事件で逮捕された人物に、私は大学時代に少し面識がありました。
だからこそ、「この人なら大丈夫」という人間関係上の感覚だけでは、防止策にならないと思います。
学校では、誰であっても一線を越えにくい仕組みをつくる。それが必要なのだと思います。
これは盗撮だけではありません。
体罰、不適切なSNS利用、個人情報の扱い、不適切指導。
さまざまな学校事故や不祥事にも通じる考え方だと思います。

子どもにも具体的なルールを教える
子どもには、「人を勝手に撮らない」だけで終わらせない方がよいと思います。
例えば、
撮影するときは相手に確認する。
嫌だと言われたら撮らない。
着替えやトイレなどでは撮影しない。
撮った画像を勝手に送らない。
不適切な画像を受け取ったら転送しない。
困ったら大人に相談する。
など、かなり具体的に教える必要があります。
そして、「ルールだからダメ」ではなく、「相手の尊厳を守るため」というところまで伝えたいです。
『校内盗撮』を読むと、こうした情報モラル教育の必要性についても考えさせられます。
「被害を言える学校」であることも大切
盗撮被害は、とても言い出しにくいものだと思います。
「恥ずかしい」
「友達に知られたくない」
「ふざけただけと言われるかもしれない」
そんな不安から、子どもが相談できないこともあるでしょう。
だから学校は、「撮られたかもしれない」「変な画像を見つけた」という段階でも相談してよいと伝えておく必要があります。
そして相談されたときに、「それくらいなら」「遊びだったんじゃない?」と軽く扱わないことが大切です。
被害を防ぐだけでなく、被害を訴えられる学校をつくることも大切なのだと考えさせられました。

この本を読んで、「自分は関係ない」と思えなくなった
『校内盗撮』を読む前の私は、盗撮事件について、「自分は絶対にしない」と思っていました。
もちろん今もそうです。
でも、この本を読んで変わったのは、「だから自分には関係ない」ではないということです。
同僚の不自然な行動に気付けるか。
学校の死角に気付けるか。
子ども同士の撮影を「悪ふざけ」で終わらせていないか。
学習用端末の使い方をきちんと教えているか。
相談しやすい学校になっているか。
考えるべきことはたくさんあります。
読んでいて何度も、「では、自分の学校ではどうだろう」と考えさせられました。
それが、私がこの本を教員に勧めたい一番の理由です。
盗撮する人の心理を知る。
子どもも加害者になり得ることを知る。
学習用端末のリスクを考える。
学校の仕組みを見直す。
相談体制を考える。
そうしたことを、一冊を通して考えることができます。
「盗撮なんて自分には関係ない」と思っている先生ほど、一度読んでみてほしいと思います。
※本記事は、斉藤章佳著『校内盗撮』を読んだ私自身の感想をもとに、教員の立場からまとめたものです。盗撮や性的画像に関する対応は、事案や法令、自治体の方針によって異なります。実際の対応では、管理職・教育委員会・警察等の関係機関と連携し、最新の法令やガイドラインをご確認ください。
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