【40代教員の退職カウントダウン216:退職まで残り2年7か月】
はじめに
私は、2028年度末で教員を辞めるつもりです。
このブログでも以前から、そのことを公表してきました。
大きな理由は、あまりにも仕事が多く、時間外労働も多いからです。
最近は、仕事が増えすぎた結果、「教員という仕事そのものが持っている面白さを、十分に味わえなくなっている」ことは、自分だけでなく、同じ教員の多くの仲間が抱える問題なのではないかと思うようになりました。

今回は、「先生はなぜ辞めるのか」という問題について、文部科学省やOECDのデータを見ながら、私自身の働き方、そして一足先に教員を辞めた妻の姿も交えて考えてみたいと思います。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。
今年度、私は4つの役割を兼務しています
今年度、私は小学校で、教務主任・6年生の単学級担任・生徒指導主任・特別支援コーディネーターを兼務しています。
【なぜ教務主任をしながら担任を?教員不足の現場から見えた実態(R8年度)】

教務主任だけでも、学校全体の教育課程、時間割、行事、各種調整など、学校運営の中心に関わる仕事です。
そこに6年生の担任があります。しかも単学級です。
もちろん、日々の授業があります。
さらに生徒指導主任として学校全体の生徒指導に関わり、特別支援コーディネーターとして支援を必要とする子どもや保護者、関係機関との調整にも関わります。
ちなみに昨年度も、教務主任+2年生担任+特別支援コーディネーターでした。
二年続けて、教務主任と担任と特別支援コーディネーターを兼務しています。
【なぜ教務主任をしながら担任を?教員不足の現場から見えた実態(R7年度)】

一つ一つの仕事は、決して嫌いではありません。むしろ、それぞれに面白さがあります。だからこそ、もったいないし、しんどいのです。
どれも面白い仕事なのに、全部を抱えると面白くなくなる
例えば、授業。
子どもたちのためにより良い授業について考える時間は、本来とても楽しいものです。
教務の仕事も同じです。
学校全体を見渡しながら、より良い教育環境を考えることには、大きなやりがいがあります。
特別支援教育も、生徒指導もそうです。
ところが、これらを同時に抱えると状況が変わります。
一つの仕事にじっくり向き合う前に、次の仕事が入ってくる。
授業を考えていたら電話が鳴る。
子どものことで相談を受けていたら、教務の仕事が入る。
教務の資料を作っていたら、学級の仕事を思い出す。
そして結局、勤務時間だけでは終わらない。
私がしんどいと感じているのは、仕事一つ一つの内容というより、仕事の「重なり方」なのかもしれません。

私だけの特殊な状況なのだろうか
私の働き方だけを見ると、「その学校の人員配置が特殊なのでは?」と思う人もいるかもしれません。
ところが、全国の数字を見ると、似たようなことが各地で起きています。
文部科学省の2025年度「教師不足」に関する実態調査では、5月1日時点で全国の公立学校に3,827人の教師不足が生じていました。小学校だけでも1,699人です。
さらに私は、この調査の中で非常に気になる数字を見つけました。
小学校で本来担任になるはずだった教員が不足したため、別の役割の先生を担任に回しているケースが全国で1,086人ありました。

その内訳を見ると、
少人数指導などを担当する予定だった教員 299人
児童生徒支援などを担当する予定だった教員 137人
主幹教諭・指導教諭・教務主任 417人
校長・副校長・教頭 116人
です。
こうした状態が770校で起きています。
私はこの417人の数字を見たとき、「自分と同じような働き方をしている人が全国にいるんだな」と、切なく感じました。
【教員不足は2030年代に解消?データから未来を考えてみた】
担任が配置されれば「解決」なのだろうか
例えば教務主任が担任になったとします。すると、そのクラスには担任がいます。
表面的、対外的には「担任不足は解消した」ことになります。
でも当然ながら、教務主任の仕事が消えるわけではありません。
同じことは、児童支援担当にも言えます。副担任などから担任になれば、そのクラスは助かります。
でも、本来その先生が担当するはずだった児童支援の仕事は薄くなります。

管理職が担任や授業を引き受ければ、学校全体をマネジメントしたり、困っている職員を支援したりする時間が減ります。
つまり、人が一人足りない影響は「マイナス1人」では終わらない。その穴を埋めた人の仕事が、また別の誰かに移っていくからです。
私は今、まさにその構造の中で働いているように感じています。

「教員は忙しい」は数字にも表れている
OECDの国際教員指導環境調査「TALIS 2024」を見ると、日本の中学校のフルタイム教員が申告した1週間の総労働時間は平均55.1時間。OECD平均の41時間を大きく上回っています。

日本の中学校教員が大きなストレス源として挙げたものでは、
「事務的業務が多すぎる」63%、
「保護者への対応」56%、
「国や自治体などから求められる事項の変化への対応」43%
などが上位でした。
興味深いのは、日本の教員の79%は、それでも「全体として仕事に満足している」と答えていることです。一方、給与を除く雇用条件への満足は37%にとどまります。私は、この数字に少し納得します。
教員という仕事自体は好き。でも、この働き方をずっと続けたいかと言われると別問題。
そう感じている先生は、少なくないのではないでしょうか。
精神疾患による休職者は7,000人を超えている
長時間労働だけが原因とは言えませんが、教員のメンタルヘルスの問題も無視できません。
2024年度、公立学校の教育職員で精神疾患によって病気休職した人は7,087人でした。
2023年度の7,119人より32人減ったものの、依然として高い水準です。

また、OECDのTALIS 2024では、日本の30歳未満の中学校教員の20%が「5年以内に教職を離れる意向」を示しています。2018年から6ポイント増えています。
若い先生の5人に1人が、「この仕事をずっと続けるのだろうか」と考えている状況は、軽く見るべきではないと思います。
実は、私の妻も教員を辞めました
そして私にとって「教員を辞めた後」は、決して遠い話ではありません。
妻も以前は正規教員でした。しかし教員を退職し、現在は自分でペットシッターの仕事を立ち上げています。
妻は今、教員時代より、明らかに生き生きと働いています。以前、この経緯については別の記事にも書きました。

もちろん個人事業なので、公務員のような安定性があるわけではありません。
毎月決まった給料が入るわけでもありません。営業も、予約管理も、経理も、自分でやらなければなりません。
それでも、自分で仕事を組み立て、お客さんと関わり、必要とされ、自分なりのペースで働いている妻は、以前より楽しそうに見えます。
身近にこういう人がいることは、私自身が退職後を考える上でも大きな影響を与えています。
辞めた先生は、その後どうなっているのか
実は、「教員が何人辞めたか」という公的統計はあっても、その先生たちが辞めた後どうなったのかを追跡した全国的な公的統計は、ほとんどありません。
そこで参考になるのが、教員のキャリア支援を行うRe-Careerが2026年に実施した元教員107人への独自調査です。
この調査では、退職を「後悔していない」80.4%、「もう一度同じ状況になっても退職する」が75.7%。そして働き方の満足度は、教員時代4.5点 → 退職後7.2点に上昇していました。
一方で、非常に重要な数字もあります。
77.6%が「年収は減った」と回答しているのです。

つまり、教員を辞めたら、何もかも良くなるわけではない。
収入は減るかもしれない。安定も失うかもしれない。
それでも働き方への満足度は高くなった人がいる。
この結果は、妻を身近で見ている私にはとても興味深く感じられます。
※なお、この調査は全国の元教員を無作為抽出した公的調査ではありません。SNSや教員コミュニティなどを通じた107人への民間調査なので、元教員全体を代表する数字とは言えません。
【HOW TO 教員の転職シリーズ|8つの実例とキャリア戦略で“これからの働き方”が見えてくる】

「教員を辞める=教育を捨てる」でもない
同じ調査で、元教員の現在の働き方を見ると、
個人事業主・フリーランス 26人
無職・準備中 20人
教育業界以外の民間正社員 13人
教育関係の民間正社員 10人
非常勤講師・臨時的任用 8人
正規教員に復帰 4人
となっています。
ここからも分かるように、教員を辞める=一般企業へ転職するとは限りません。
正規教員という働き方を辞めて、非常勤として学校と関わることもできます。
私の知り合いにも、教頭になって1年で退職し、非常勤講師になった先生がいました。
【HOW TO 教員の転職シリーズ⑤ ~管理職だって嫌になる!教頭を辞めた女性教員の選択~】

私自身も2028年度末に退職した後、教育との関わりを完全になくしたいわけではありません。
私が辞めたいのは、「教育」ではなく、今の働き方なのだと思います。
【40代教員の退職後プラン|常勤講師で全国を旅する「漫遊計画」】
【40代教員の退職後プラン|常勤講師の給与比較から見える現実】


だからこそ「嫌なら辞めればいい」では終わらせたくない
ここまで読むと、「それなら辞めたい人は辞めればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれません。
個人の人生という意味では、その通りです。
しかし、学校という組織を考えると、それだけでは済みません。一人辞めても、その人が持っていた仕事は学校に残ります。
つまり、残った人の仕事量が増える。これが続けば、残った人も疲れ、辞めたくなります。
だから私は、「辞める先生をどうやって引き止めるか」だけではなく、「なぜ辞めたくなるほど仕事が集中するのか」を考えた方がよいと思っています。

教員という仕事が面白いからこそ、もったいない
ここまで書いてきましたが、私は決して、「教員なんて辞めた方がいい」と言いたいわけではありません。
むしろ逆です。本来、ものすごく面白い仕事だと思っています。

教員ほど「人の成長」に直接関われる仕事は、そう多くありません。
だからこそ、仕事が多すぎることで、その面白さを感じる余裕がなくなっていく現状がもったいないのです。
授業を面白くするための30分より、報告書を作る30分。
子どもと話す30分より、調整の電話をする30分。
若手と授業について話す30分より、自分の残った仕事を片付ける30分。
そんなことが積み重なると、いつの間にか「何のために教員になったのだろう」と思う瞬間が増えてしまいます。

私は2028年度末に教員を辞める予定です。
今回、改めて考えてみると理由がはっきりしてきました。
教員という仕事そのものではなく、教員という仕事を取り巻く働き方から離れたい。
一人の先生に、担任も、教務も、生徒指導も、特別支援も、さまざまな仕事を重ねる。
そして、「先生なのだから」という善意と責任感で学校を回す。
それではいつか、誰かが限界を迎えます。
辞めた先生を責めても問題は解決しません。残って頑張っている先生に、さらに仕事をお願いするだけでも解決しません。
必要なのは、一人休んでも、一人辞めても、残った人が壊れない学校。
そして、教員という仕事の面白さを、教員自身が味わえる学校なのではないでしょうか。
※本記事で紹介したRe-Career「元教員キャリア実態調査2026」は、全国35都道府県の元教員107人を対象にした民間の独自調査です。全国の退職教員全体を代表する統計ではないため、退職後の一例を知るための参考データとして紹介しています。
主な参考資料
文部科学省「令和7年度学校教員統計(中間報告)」
文部科学省「令和7年度『教師不足』に関する実態調査」
文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」
OECD「Results from TALIS 2024:Japan」
Re-Career株式会社「元教員キャリア実態調査2026」


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