【40代教務主任の退職カウントダウン196:退職まで残り2年8ヶ月】
はじめに
前回の記事では、教務主任として初めて教員採用試験(二次試験)の面接官を経験し、「面接官は何を見ているのか」について書きました。

今回は、もう一つ担当した模擬授業の監察官として感じたことを書いてみたいと思います。
もちろん、試験には守秘義務があります。
そのため、課題や採点基準、評価方法などについてお話しすることはできません。
この記事でお伝えしたいのは、一日を通して多くの模擬授業を見て、私自身が感じたことです。
教員採用試験を受ける皆さんは、「板書は大丈夫だろうか。」「時間内に終われるだろうか。」「声が小さくならないだろうか。」そんなことばかり気になるかもしれません。

しかし、実際に面接官席から見ていると、もっと大切なものがあることに気付きました。
それは、「子どもと向き合う教師としての姿勢」です。
今回の記事では、私自身が感じたこの部分を掘り下げていこうと思います。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯】
模擬授業は「授業の発表会」ではない
私は今回、多くの受験生の模擬授業を見ました。
その中で最初に感じたのは、教員採用試験の模擬授業は授業技術を競う発表会ではないということです。
受験生の中には、「完璧な授業を見せよう」という思いが強く伝わる人もいました。
説明も上手。
板書もきれい。
時間配分もほぼ予定通り。
本当によく練習してきたことが分かります。

しかし、学校現場で二十年以上働いてきた立場からすると、現実の授業は、予定どおりに進まないことの方が普通です。
子どもが思わぬ発言をする。質問が予定外の方向へ広がる。理解に時間がかかる子もいれば、あっという間に理解する子もいます。
教師は毎時間、その状況を見ながら授業を組み立てています。

だから私は、「予定どおり進められる先生」より、「子どもに合わせて授業を変えられそうな先生」に魅力を感じました。
教室に「子ども」がいる先生
今回、一番印象に残ったのはここでした。
模擬授業の教室には、本物の子どもはいません。
それでも、子どもが見える授業があります。
例えば、
「○○さん、いい考えですね。」「少し難しかったかな。」「みんなはどう思う?」「じゃあ隣の人と相談してみよう。」
そんな一言があるだけで、教室の空気が変わります。
反対に、説明だけが続く授業は、よく練習されたプレゼンテーションのように感じてしまいました。

教師は、説明する仕事ではありません。
子どもが考え、子どもが学び、子どもが成長する時間をつくる仕事です。
その違いは、短い模擬授業の中でも自然と表れていました。

「間」を大切にできる先生
もう一つ印象的だったことがあります。
それは、話すスピードです。
子どもに慣れている先生ほど、質問したあとに、少し待ちます。答えを急ぎません。
教師はつい、沈黙が怖くなります。
でも、子どもにとっては、その数秒が「考える時間」になります。
説明を続けることより、待つことの方が難しい。私は学校現場でもそう感じています。
模擬授業でも、その「間」が自然に取れている人は、実際の教室がイメージできました。
そういう意味で、私は「教師は役者であるべき」という持論を持っています。役者のように自分自身を演出するポイントについて、以前記事にまとめました。
【教員こそ読んでほしい一冊 鴻上尚史『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』】

緊張しても、それは悪いことではない
この記事を読んでいる受験生の中には、「緊張して失敗したらどうしよう。」と思っている人もいるでしょう。

でも、安心してください、私もそうでしたし、今もそうです。
教員採用試験。教育実習。初任者研修。研究授業。管理職による授業参観。
二十年以上教員を続けていても、今でも多少は緊張します。そんな私が面接官をやっているのです。
だから、少し言葉が詰まっても、言い直しても、必要以上に気にする必要はありません。
それよりも、一度深呼吸をして、笑顔を取り戻そうとする姿勢の方が、人としてずっと好印象でした。

教務主任として改めて思ったこと
今回の経験を通して、私自身が改めて考えさせられたことがあります。
学校現場では、授業が一番上手な先生が、必ずしも一番信頼されるわけではありません。
もちろん授業力は大切です。
しかし、毎日子どもの話を丁寧に聞く先生。
困っている子に自然に寄り添える先生。
保護者から信頼される先生。
職員室で相談しやすい先生。
そんな先生は、どの学校でも信頼されています。
模擬授業も、単に授業技術を競う試験ではなく、「この人なら安心して教室を任せられる。」
そんな人物かどうかを見ているのではないか。私はそう感じました。

「100点の授業」より「毎日続けられる授業」
若い先生から、「研究授業みたいな授業が毎日できません。」と相談されることがあります。
私はそのたびに、「それでいい。」と答えます。
研究授業は、何週間も教材研究を重ねて行います。
でも、学校では毎日5〜6時間の授業があります。
しかも、学級経営や保護者対応、校務分掌、会議、行事準備……
教師の仕事は授業だけではありません。

だから本当に大切なのは、毎日続けられる授業です。
子どもが安心して学べること。分からない子を置いていかないこと。
「学校って楽しいな。」そう思える教室をつくること。
それが教師の仕事だと思っています。
教員採用試験の模擬授業も、完璧な授業を演じようとするより、「子どもが安心して学べる教室をつくろうとしている先生」であることが伝われば十分ではないでしょうか。
少なくとも面接官を経験した私はそう思っています。

おわりに
模擬授業というと、「板書がきれいな人が有利。」「話が上手な人が有利。」そんなイメージを持つ人も多いと思います。
しかし、今回教員採用試験を通して私が最も感じたのは、子どもへのまなざしは隠せないということでした。
教師という仕事は、子どもが好きだからできる仕事ではありません。
子ども一人一人を理解しようと努力し続ける仕事です。

その姿勢は、わずか10分ほどの模擬授業でも自然と伝わってきます。
これから教員採用試験を受ける皆さんには、完璧な授業を目指すより、「子どもと一緒に学ぶ授業」を目指してほしいと思います。
それが、今回の経験を通して私が最も強く感じたことです。



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