【40代教員の退職カウントダウン190:退職まで残り2年8か月】
はじめに 『教員の「安定」は、本当に強みであり続けるのか』
教員は、昔から「安定した仕事」と言われてきました。
景気が悪くなっても、急に給料が下がるわけではない。
会社の倒産やリストラを心配する必要も少ない。
ボーナスも比較的安定しているし、住宅ローンも組みやすい。
特に、長く続いたデフレの時代において、公務員や教員の安定性はかなり大きな強みでした。
今までのデフレ時代には、「給料が急に増えないけれど、急に減ることもない」という教員の働き方は、かなり堅実な選択肢だったと思います。

しかし、ここ数年で状況が変わってきました。
物価が上がり、金利も少しずつ上がる。民間企業では賃上げの流れが強まる。
こうした環境になると、教員の「安定」は今までとは違った見え方をしてきます。
そこで今回の記事では、時代の変化によって教員の最大の強みである「安定性」が、今後も武器であり続けるのかを考えてみたいと思います。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯】
デフレ時代の教員は、かなり強かった
デフレ時代を振り返ると、教員という仕事はかなり強かったと思います。
物価が上がらない時代には、給料が大きく伸びなくても生活水準は維持しやすいです。
住宅ローン金利も低く、毎月の返済額も比較的安定している。
不況こそ教員をはじめとした公務員の強さは際立ちました。
「高収入ではないけれど、安定している」
「派手さはないけれど、人生設計がしやすい」
これが、デフレ時代の教員の大きな魅力です。
つまり教員は、低インフレ・低金利・低賃上げの時代に非常に合った職業だったと言えます。

インフレ時代には、教員の弱点も見えてくる
ところが、今のようなインフレ時代になると話が変わります。
物価が上がるということは、同じ給料でも買えるものが減るということです。
食費も電気代もガソリン代も日用品も外食も旅行も教育費も上がる。
こうなると、たとえ給料の額面が少し上がっても、生活実感としては豊かになりにくいですね。

特に教員の給与は、民間企業のように業績や成果によって大きく上がる仕組みではありません。
公務員給与は、民間給与との比較をもとに改定されるので、民間賃金が上がったあとに、公務員給与が後から追いかける形になりやすいです。
【教員給与の現状・将来見通しと他業種との比較(2025年時点)】
【実はあまり増えていない?担任手当の実情― 2026年に教員の給与はどう変わったのか ―】
実際、今は民間では、初任給の大幅引き上げ、若手の賃上げ、人材確保のための待遇改善が進んでいます。一方で、残念ながら教員の給与は制度的に大きく跳ねにくいです。
この差が積み重なると、教員は「安定しているけれど、相対的には豊かさを感じにくい仕事」になっていく可能性があります。


円安は、教員世帯の生活費をじわじわ押し上げる
インフレを考えるうえで、円安も無視できません。
日本は、エネルギーや食料品、原材料の多くを海外に依存しています。
円安になると、海外から輸入するものの価格が上がりやすくなります。
もちろん、為替だけで物価が決まるわけではありませんが、円安は日本の家計にとって重い負担になりやすいです。

特に、教員のように給与が制度的に決まっている職業では、円安による生活費上昇を自分の収入増で吸収しにくいです。
民間企業なら、業種によっては円安メリットを受ける企業もあり、円安が給料増になることもあるでしょう。しかし、教員の給与は円安で増えるわけではありません。
ここが、教員や公務員にとってのインフレ・円安局面の怖さです。
収入は安定しているが大きく増えない。しかし、支出はじわじわ増えていく。そして、その支出増に給与がすぐには追いつかない。
この構造が、インフレ・円安時代の教員の生活の余裕を少しずつ削っていきます。
【20年前と今を比べて見えたこと ― 教員はインフレ時代にどう備えるか】

金利上昇は、住宅ローン世帯に重くのしかかる
もう一つ大きいのが、金利上昇です。
教員は住宅ローンを組みやすい職業です。
安定した収入があり、雇用も比較的安定しているため、金融機関からの信用も高いです。
これは低金利時代には大きなメリットでした。

公務員としての信用力を生かして、家を買い、低金利で確実に返済していく。
家族を持つ教員世帯にとって、持ち家は自然な選択肢の一つでした。
しかし、金利が上がる時代には、この強みが弱点にもなります。
特に変動金利で大きな住宅ローンを組んでいる場合、将来的な返済負担の増加に注意が必要です。
【忙しい先生こそ「借りる前に」知っておきたい住宅ローンの仕組みと注意点】
たとえば、住宅ローンの金利が1%上がるだけでも、借入額が大きい家庭では毎月の負担がかなり変わります。ローンの金額によっては月に数万円変わることもあります。
つまり、安定職だから家を買いやすいというメリットは、安定職だからこそ大きなローンを背負いやすいというリスクと表裏一体なのです。
「不況に強い」と「インフレに強い」は違う
ここで大事なのは、教員は不況に強いが、インフレに強いとは限らないということです。
不況時に強い職業とは、雇用が安定し、給与が急落しにくい職業です。その意味で、教員は今でも強いです。
しかし、インフレ時代に強い職業は少し違います。
インフレ時代に強いのは、賃金交渉力がある人や転職市場で高く評価される人。
成果に応じて収入を伸ばせる人や資産を持っている人。
固定金利や低い生活費で支出を抑えられる人。
教員は、「雇用の安定」は非常に強いですが「賃金交渉力」や「成果による収入増」の属性はは非常に弱いです。
副業や転職によって収入を大きく伸ばす自由度も、民間に比べれば高くありません。
だからこそ、インフレ時代には、教員の強みと弱みがはっきり分かれてくるのだと思います。

民間賃上げが進むほど、教員の相対的な魅力は下がりやすい
ここ数年、民間企業では賃上げの流れが強まっています。
人手不足が深刻になり、企業は人材を確保するために賃金を上げざるを得なくなっています。
特に若手人材、専門性のある人材、ITや営業、マネジメントに強い人材は、より良い条件を求めて就職・転職しやすくなっています。
この流れは、教員にも影響します。
「教員は安定している」という魅力はこの先も残るでしょう。
しかし、
「民間の方が給料が高い」
「働き方の自由度が高い」
「転職でキャリアアップできる」
「成果が収入に反映されやすい」
という選択肢が増えると、優秀な若い人材ほど教員を選びにくくなる可能性があります。
実際、近年の教員採用試験は倍率・受験者数ともに低下の一途です。

教員の安定は、今後も価値がある
ただし、誤解してほしくないのは、教員の安定性が無価値になるわけではないということです。
むしろ、今後も教員の安定性は大きな価値を持ちますし、民間企業にはない強みです。
特に、景気が悪化したとき、教員の安定性は再び大きな安心材料になります。
民間企業が不況で苦しむ局面では、公務員や教員の強さは今後も残るでしょう。

問題は、安定していることだけでは、十分に豊かさを感じられる時代ではなくなってきたということです。

これからの教員に必要な視点
これからの教員に必要なのは、「公務員だから安心」という一言で思考停止しないことだと思います。
インフレが続けば、生活費は上がります。
円安が進めば、輸入品やエネルギー価格を通じて家計に影響します。
金利が上がれば、住宅ローン負担が増える可能性があります。
民間賃金が上がれば、教員給与の相対的な魅力は下がりやすくなります。
だからこそ、教員も経済の変化をきちんと見ていく必要があります。
これは、教員を辞めるべきだという話ではありません。
教員を続けるにしても、辞めるにしても、経済環境の変化を理解しておくことが大切だという話です。
【教員の金融教養シリーズ総まとめ 金融教育ができる教員になるために学んだこと】

まとめ
教員は不況に強い。しかし、インフレに強いとは限らない
教員は、今後も安定した仕事です。
社会的意義も高く、雇用の安定性もあります。
しかし、インフレ、円安、金利上昇、民間賃上げという時代においては、これまでのように「安定しているから安心」とだけ考えるのは危険です。
インフレ時代には、支出が先に増え、給与は後から追いかけます。
住宅ローン金利も上がる可能性があります。
民間企業の賃金が伸びれば、教員の給与は相対的に見劣りしやすくなります。
つまり、これからの教員は、不況には強いが、インフレにはそこまで強くないという現実を直視する必要があります。
教員の安定は、これからも価値があります。
しかし、安定だけで豊かさを感じられた時代は、少しずつ終わりつつあるのかもしれません。
次回の後編では、インフレと民間賃上げの時代に、教員という仕事の魅力はどう変わるのか。
若い人材は集まり続けるのか。
処遇改善や働き方改革で、教員の未来は明るくなるのか。
「人材不足と処遇改善の限界」という視点から、教員という仕事のこれからを考えてみたいと思います。



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