【40代教員の退職カウントダウン208:退職まで残り2年6か月】
はじめに
「昔のセンター試験とは、かなり違うな」
大手予備校の大学入試講義を聞きながら、特にそう感じたのが大学入学共通テストの話でした。
私たち教員や保護者世代にとっては「センター試験」の方がなじみがあるかもしれません。
もちろんセンター試験も簡単な試験ではありませんでした。
しかし、現在の共通テストでは、知識を覚えているだけではなく、その知識をどう使うかがより重視されているそうです。
シリーズ「進路指導ができる教員になろう」。
第3回は、共通テストについて考えてみます。
共通テストではどんな力が求められているのか。そこを知ると、普段私たちが学校で行っている授業とも意外につながっていることが見えてきます。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯】
シリーズ最初の記事はこちら【大学入試は私たちの頃とこんなに違う――教員が知っておきたい現在の大学受験】

共通テストは何を測ろうとしているのか
大学入試センターは、共通テストの問題作成において、知識・技能だけでなく、思考力・判断力・表現力等を適切に評価することを基本的な考え方として示していました。
つまり、「公式を覚えていますか?」「この用語を知っていますか?」だけではない力を求めているのです。
講義では、
習った数学を日常生活の場面に当てはめる。
物理の知識をスポーツの動きと関連付ける。
複数の文章やグラフから必要な情報を取り出す。
といった問題が紹介されていました。

必要になるのは、「知っている」から「使える」への一段階上の力なのだそうです。
「問題文が長い」と感じる理由
共通テストを実際に見てみると、まず驚くのが情報量です。
文章や表、グラフや図など複数の資料が一つの問題の中に登場します。
そのため、講師によると「問題の解き方が分からない」というより、「時間内に情報を処理しきれない」受験生も少なくないとのことでした。
これは昔のセンター試験との大きな違いだと思います。
つまり、問題を解く前に「問題を理解する力」が必要になっているのです。

英語も「文法問題を解く試験」ではない
英語についても、私たちの頃とはかなり印象が違います。

共通テストの英語では、いわゆる発音問題や文法だけを単独で問う問題ではなく、文章や資料を読みながら情報を整理する問題が中心になっています。
大学入試センターも、英語では、文章や音声から概要・要点・詳細、話し手や書き手の意図を理解することに加え、理解した情報を整理し、何を取り上げるか判断する力を重視していると言っています。
ただ、講師の話では、「だから文法を勉強しなくてよい」という意味ではないそうです。
むしろ、文法や単語などの基礎が身についていることを前提として、その知識を使って大量の英文から必要な情報を素早く取り出す必要があります。
ここでも、「知識があるか」だけでなく、「知識を使えるか」が問われているわけです。
国語だけの問題ではない「読解力」
話を聞いていて面白いと思ったのが、読解力は国語だけの力ではないということです。
数学の文章題を理解する。
理科の実験条件を読む。
社会の統計資料を比較する。
英語で必要な情報を探す。
どの教科にも、「何を聞かれているのか」「どの情報が必要なのか」を読み取る力が必要です。
つまり、共通テストで求められる読解力とは、単に長い文章を読む力というより、情報を整理し、必要なものを選び、考えるための力なのだと思います。

共通テストの話なのに、小学校の授業を思い出した
ここまで講義を聞いて、私は少し不思議な感覚になりました。
大学入試についての話を聞いているはずなのに、普段の小学校の授業で聞いている言葉がたくさん出てくるからです。
「思考力・判断力・表現力」
「知識の活用」
「複数の資料を関連付ける」
「自分で必要な情報を選ぶ」
「学んだことを別の場面で使う」
私たち教員にとっては、どれも聞き慣れた言葉です。

もちろん、「小学生のうちから大学入試対策をしよう」という話ではありません。
私はむしろ逆だと思います。
小中学校の学習は、大学入試の問題を解くための、その土台となる学び方を身につけることにつながっています。
文章をじっくり読む。
グラフから気付いたことを話す。
「どうしてそう考えたの?」と理由を説明する。
一つの資料だけでなく複数の情報を比べる。
習ったことを別の問題に使ってみる。
こうした日々の授業の積み重ねが、高校、大学へと続いているのだと思います。

「難しい問題が解ける子」だけが強いわけではない
講義ではもう一つ、印象に残る話がありました。
大学入試では、みんなが解ける基本的な問題を確実に取ることが非常に重要なのだそうです。
難問を一問解けても、基本的な計算ミスや読み間違いを重ねれば点数は伸びません。
共通テストでも、知識そのものは基本的な内容なのに、条件を読み落としたり、資料を見間違えるといったことで失点することがあるとのことです。
これは受験だけの話ではない気がします。
「難しいことができる子」を育てる以前に、基礎を理解し、必要な場面で正確に使える子を育てる。
このことの大切さを改めて感じました。

進路指導をする教員として知っておきたいこと
共通テストについて、小中学校の教員が問題形式まで詳しく知る必要はないと思います。
でも、現在の大学入試が、単なる暗記量だけを競う試験ではなくなっていることは知っておいて損はありません。
そして、「この子は覚えるのが苦手だから勉強ができない」「知識量が少ないから大学進学は難しい」と単純に考えるのではなく、
その子が、資料から気付きを見つけられる。
知っていることを別の場面につなげられる。
自分の考えを説明できる。
必要な情報を整理できる。
といった力にも目を向けたいと思います。

「知っている」から「使える」へ
今回、共通テストについて話を聞いて、私が一番印象に残ったのは、「知っているだけでは足りない」ということでした。
しかし同時に、知識が必要なくなったわけでもありません。
知識があって、その意味を理解して、必要な場面で取り出して、他の知識や情報と組み合わせて使う。
そこまで含めて「学力」と考える時代になっているのだと思います。
そう考えると、共通テストは大学受験だけの話ではありません。
私たちが普段の授業で、「覚えた?」だけで終わらず、「それを使って考えてみよう」と子どもに投げかける。その積み重ねが、ずっと先の学びにつながっているのかもしれません。
子どもがその先でも学び続けられる力を育てること。それもまた、私たち教員ができる進路指導の一つなのだと思います。

次回は、「偏差値だけで大学を選ばない――AP・CP・DPとST比から考える大学選び」について考えてみたいと思います。
※本記事は、大手予備校が主催する大学入試に関する講義で学んだ内容をもとに、教員の立場から整理したものです。共通テストに関する制度・出題方針については、大学入試センターが公表している資料も確認しています。


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