【40代教員の退職カウントダウン207:退職まで残り2年6か月】
はじめに
「推薦で早く決めた方が楽なんじゃない?」
大学受験を控えた子どもに対して、ついそんなことを考えてしまうことがあります。
私自身、高校生の息子がいるので、「推薦で決まったら安心だろうな」と思う気持ちはよく分かります。

しかし、先日参加した大手予備校の大学入試に関する講義では、「推薦=楽な入試、と考えるのは危険です」という話がありました。
現在の大学入試には、大きく分けて、一般選抜 総合型選抜 学校推薦型選抜があります。
そして、この3つは単に「難しい入試」「簡単な入試」という関係ではありません。
それぞれ、「何を見て、その受験生を評価するのか」が違う入試だというのです。
シリーズ「進路指導ができる教員になろう」。第2回は、今の大学入試を理解するために欠かせない、この3つの選抜について考えてみます。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯】
前回の記事はこちら【大学入試は私たちの頃とこんなに違う――教員が知っておきたい現在の大学受験】
今や半数以上が「一般選抜以外」で大学へ
まず驚いたのが、現在の大学入学者の内訳です。
文部科学省によると、2025年度の大学入学者では、総合型選抜 19.5% 学校推薦型選抜 34.1%となっています。
合わせると53.6%!

大学入学者の半数以上が、この2つの方式を利用して入学しています。
もちろん、国立・公立・私立では割合が大きく違います。
難関大学では一般選抜の割合が高い大学もあります。
それでも、「大学入試の中心は一般選抜!」という認識では、今の大学受験を十分に理解できないことは確かです。
講師の話を聞きながら、私自身の大学受験の感覚をアップデートする必要があると感じました。

① 一般選抜とは?
まず、私たちが一番イメージしやすいのが一般選抜です。
共通テストや各大学の学力試験などを中心に合否を判定する、私たち教員や保護者世代にもなじみのある入試です。
現在の一般選抜でも、学力検査だけでなく、調査書や小論文、面接などを組み合わせる大学があります。
ただ、基本的には、「試験当日にどれだけ得点できるか」の比重が大きい入試だと考えてよいでしょう。

講師の話では、一般選抜の一つの強みは、高校3年生の最後まで学力を伸ばして勝負できることだそうです。
高校1、2年生の成績が多少振るわなかったとしても、そこから勉強して学力を伸ばせば逆転することができます。
模試がD判定、E判定でも、その後の伸びや大学ごとの配点によって結果が変わることもあります。
一方で、国公立大学では複数教科を長期間勉強する必要があり、受験期間も長くなります。
精神的にも体力的にも大変な入試です。
② 学校推薦型選抜とは?
次が学校推薦型選抜です。
大きな特徴は、高校の校長からの推薦を受けて受験するという点です。

調査書や推薦書などを利用し、大学が定めた条件に基づいて選抜されます。
よく聞く、「指定校推薦」も、この学校推薦型選抜の一つです。
ほかにも、公募型の学校推薦型選抜があります。
ここで注意したいのが、最近は特に「推薦=合格」ではないということです。
現在の制度でも、学校推薦型選抜では、教科テスト、共通テスト、小論文・面接等、資格・検定試験などを用いて学力を評価する仕組みになっており、推薦書による人物の良し悪しだけで判断することは減っています。
つまり、「学校の成績がいいから推薦で楽に大学へ行ける」というものではないのです。
③ 総合型選抜とは?
総合型選抜は、以前「AO入試」と呼ばれていたものに近い入試です。

総合型選抜では、
「この大学で何を学びたいのか」
「これまで何をしてきたのか」
「大学の求める学生像と合っているか」
などを含めて、受験生を多面的に評価します。
文部科学省も、総合型選抜について、詳細な書類審査や丁寧な面接などを組み合わせ、能力・適性・学習意欲・目的意識などを総合的に評価する入試としています。
そのため、志望理由書、活動報告書、小論文、プレゼンテーション、面接など、大学によってさまざまな方法が使われます。
講師の話では、総合型選抜は「学力試験が少ないから楽」どころか、準備にはかなりの時間が必要とのことでした。

2027年度入試から「面接」がさらに重要に
文部科学省は2027年度(令和9年度)大学入試から、総合型選抜や学校推薦型選抜について、書類選考のみの試験を廃し、原則として面接による評価を行う新しいルールを示しました。
背景には、一部の大学で「年内入試」が実質的な一般選抜の前倒しのようになっていることへの問題意識があるそうです。
文部科学省によれば、2025年度入試の時点でも総合型選抜の93%、学校推薦型選抜の77%ですでに面接が行われていました。
つまりこれからは、より一層、「なぜこの大学なのか」 「何を学びたいのか」 「自分はどんな人間なのか」を自分の言葉で語ることが求められるということです。

これは単なる「面接テクニック」の問題ではないと思います。
高校生活の中で、自分自身や進路についてどれだけ考えてきたのかが問われる入試になってきているのではないでしょうか。
「年内入試」という言葉にも注意したい
総合型選抜や学校推薦型選抜は、一般選抜より早い時期に行われることが多いため、「年内入試」と呼ばれることがあります。
2027年度入試の原則では、総合型選抜の出願は9月1日以降、学校推薦型選抜は11月1日以降となっています。
一般選抜の教科・科目の個別テストは原則として2月1日以降です。
つまり、高校3年生の秋には受験が本格的に始まる子もいるわけです。
ここから逆算すると、高校3年生になってから進路や受験方法を考え始めるのでは遅いことも分かります。
特に総合型選抜を考えるのであれば、高校1、2年生から大学について調べたり、自分の興味を深めたりしておく意味が大きくなります。

「推薦なら楽」に潜む落とし穴
講義で特に印象に残ったのが、年内入試の準備と一般選抜の勉強をどう両立するかという話でした。
総合型選抜を受けようと思えば、プレゼンテーションなど様々な準備が必要になります。
その時間は当然、一般選抜に向けた勉強時間から取られます。
そして、必ず合格するわけではありません。
講師によれば、総合型や推薦で不合格になった後、精神的に切り替えられず、その後の一般選抜に影響してしまう受験生もいるとのことでした。

だから、「とりあえず受けてみれば?」という勧め方には注意が必要なのだと思います。
挑戦するのであれば、「もし不合格でも一般選抜の勉強を続ける」という前提を本人も周囲も共有しておく必要があります。
合格したら入学しなければならない場合もある
もう一つ知っておきたいのが、専願と併願です。
入試によっては、「合格した場合は必ず入学する」ことが出願条件になっています。
その場合、「とりあえず合格を確保して、あとから第一志望を受ければいい」とはいきません。
特に学校推薦型選抜では、高校と大学との信頼関係も関わります。
だからこそ、推薦を出す前に、本当にその大学に進学したいのかを確認することが大切です。

これは高校の先生にとっては当然のことかもしれませんが、小中学校の教員でも、「推薦で入っておいて、もっといい大学に受かったらそちらへ行けばいい」といった認識を持たないようにしたいところです。
気を付けたい3つの言葉
今回の話を聞いて、進路指導の場面で教員や保護者が安易に言わない方がよい言葉があると思いました。
一つ目は、「推薦の方が楽だよ」です。
推薦や総合型には一般選抜とは違った大変さがあります。
二つ目は、「推薦なら受かるよ」です。
指定校推薦など合格可能性が高い方式はありますが、「推薦」という名前だけで合格が保証されるわけではありません。
そして三つ目が、「一般で受ければいい」です。
その子の評定、資格、活動歴、得意教科、志望大学によっては、総合型や学校推薦型が大きなチャンスになる場合があります。

どれか一つを教師や保護者の価値観で勧めるのではなく、選択肢を示したうえで本人が決める。
これが大切なのだと思います。
進路指導とは「一番楽な道」を教えることではない
「推薦なら一般より楽」
私自身も、大学入試について詳しく知る前は、どこかでそんなイメージを持っていました。
しかし実際には、一般選抜には一般選抜の大変さがあり、学校推薦型には学校推薦型の準備があり、総合型には総合型で求められる力があります。
大切なのは、その子がどんな力を持ち、何を学びたいのか。
そして、その大学はどんな学生を求めているのか。
その二つをつなげることです。
そう考えると、進路指導とは、「この入試なら受かりやすいよ」と答えを教えることではありません。
子どもに、「どんな大学に行きたい?」だけではなく、「そこで何をしたい?」と問いかけ、その実現のためにどんな道があるのかを一緒に整理することなのだと思います。
推薦か、総合型か、一般か。
入試方式から進路を決めるのではなく、「行きたい場所」があって、そこへ行くための方法を選ぶ。
教員としても保護者としても、この順番を大切にしたいと思います。
次回は、「共通テストはなぜ難しく感じるのか――『知っている』から『使える』学力へ」
について、今回の講義で聞いた内容をもとに考えてみたいと思います。
※本記事は、大手予備校が主催する大学入試に関する講義で学んだ内容をもとに、教員の立場から整理したものです。入試制度については2026年9月時点で公表されている文部科学省の資料も確認しています。選抜方法、出願条件、専願・併願の扱いなどは大学・学部によって異なるため、実際の受験では必ず最新年度の募集要項をご確認ください。


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