【40代教員の退職カウントダウン206:退職まで残り2年6か月】
はじめに
「今の大学入試って、こんなことになっているのか」
先日、大手予備校が主催する大学入試についての講義を聞き、率直にそう感じました。
私には高校生の息子が2人います。
大学受験がいよいよ身近になり、保護者として少しでも知っておこうと思って参加した講義でした。

しかし、話を聞いているうちに、これは受験生の保護者だけでなく、教員も知っておいた方がいいのではないかと思うようになりました。
もちろん、小中学校の教員が大学入試制度を細かく説明できる必要はありません。
しかし、高校の先にある大学進学の世界が現在どうなっているのか、大枠くらいは知っておきたい。
そこで今回から、シリーズ「進路指導ができる教員になろう」として、私自身が学んだことを整理していきたいと思います。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯】
第1回は、現在の大学入試の全体像です。
私たちが受験した頃とは、かなり違う
40代、50代の教員や保護者が自分の大学受験を思い出すと、「大学入試=高校3年生になって勉強し、一般入試を受ける」というイメージが強いのではないでしょうか。
もちろん推薦入試もありましたが、大学受験の中心は一般入試という感覚でした。
ところが現在は、大学そのものを取り巻く環境が変わり、入試方法もかなり多様化しているそうです。
共通テストの問題も変わり、出願手続きまでデジタル化しています。
つまり、教員が卒業生などに対して、自分自身の受験経験だけをもとに、「大学受験とはこういうものだよ」と話すことが、少し危険な時代になっているのです。

違い①「大学に入れるか」より「どの大学を選ぶか」の時代へ
日本には現在、800校を超える大学があります。
少子化が進んでいることもあり、「大学を選ばなければ、どこかには入れる時代」と言われることがあります。
実際、私立大学では定員割れとなっている大学も少なくありません。
講師の話では、今後は大学の統合や募集停止、学部再編なども進んでいく可能性があるとのことでした。
だからこそ、「大学に入れればいい」という進路選択は危険なのだと思います。
重要なのは、「その大学で何を学べるのか」「4年間をどう過ごすのか」「卒業後に何につながっていくのか」まで考えることでしょう。

違い② 偏差値だけでは分からない大学の違いがある
大学を比較するとき、どうしても偏差値に目が行きます。
もちろん入試難易度を見るうえで、偏差値は大切な情報です。
しかし、講義では「ST比」という数字も紹介されました。
ST比とは、簡単に言えば教員1人に対して学生が何人いるかという指標です。
このST比が小さければ、きめ細かい指導や教育が受けられます。

もちろん、「ST比が低ければ必ず良い大学」ということではありません。
ただ、偏差値だけでなくST比のような「入った後」のことまで考える必要があるという話はとても印象に残りました。
ちなみにST比は、大学の公式HPなどで確認できます。
違い③ いまや推薦・総合型は大学受験の大きな柱
現在の大学入試を考えるうえで大きな変化の一つが、総合型選抜や学校推薦型選抜の増加です。
最近では、これらのいわゆる「年内入試(年内で入試が終わる試験)」で大学に進学する学生が非常に増えているそうです。
昔の常識だった「大学受験=一般選抜」では、現在の入試を説明できません。
年内入試は今や受験生の選択の半数を超えるのだということです。
つまり一般入試の方が少数派であるということ、これは私たちの年代が一番アップデートしなければいけない情報だと感じました。

しかも推薦や総合型は私立大学だけのものではなく、国公立大学でも広く行われています。
これは、私たちの世代の大学受験との大きな違いだと感じました。
違い④ 「推薦なら楽」は大きな誤解
年内入試である推薦や総合型と聞くと、「面接と志望理由書だけで受けられる」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし現在はそう単純ではないそうです。
小論文、プレゼンテーション、口頭試問、教科の試験、英語資格、共通テストなどを組み合わせて学力を見る大学も増えています。
もちろんその分、準備にもかなり時間がかかるとのことです。

そして不合格になれば、そこから一般選抜に切り替える必要があります。
そのため講師も、「推薦だから早く決まる」「推薦なら楽」と安易に考えない方がよいと話していました。
入試方式から大学を選ぶのではなく、まず学びたい大学や学部があり、その大学に合った受験方法を考える。この順番が大切なのだと思います。
違い⑤ 共通テストは「覚えているか」だけでは通用しない
今回の講義で、教員として特に興味深かったのが共通テストの話です。
共通テストでは、単に公式や知識を覚えているだけでなく、「習ったことを別の場面で使えるか」がかなり重視されているそうです。
例えば、複数の資料を比較する。
文章とグラフを組み合わせて考える。
会話文から必要な条件を読み取る。
教科書で習った知識を実生活の場面に当てはめる。
といった問題です。
講師によれば、英語も国語も読む量が多く、限られた時間の中で必要な情報を素早く整理する力が必要とのことでした。
これを聞いて、「これは日々の授業とも無関係ではないな」と感じました。
我々が授業で大切にしている、「思考力・判断力・表現力」「知識を活用する学習」と、大学入試で問われる力がつながってきているのです。

違い⑥ 大学受験は「情報を扱う力」も必要
もう一つ驚いたのが、出願手続きです。
現在は大学入学共通テストを含め、大学入試の多くがWeb出願になっています。

顔写真を登録する。
志願者情報を入力する。
検定料を支払う。
必要書類を確認する。
受験票を印刷する。
こうした手続きを自分で進めなければなりません。
大学によっては、Web上で手続きをした後に、別途書類を郵送する必要もあるそうです。
つまり、出願そのものにも情報活用能力が求められるということです。
将来のことを思うと、保護者がすべてやってしまうのではなく、本人が主体となって進め、保護者が確認するくらいの関わり方がよいのかもしれません。
ただ、そのための力を義務教育のうちから意識してつけていかなければいけないのです。
大学入試は高校3年生だけの問題ではない
今回の講義を聞いて、大学入試への見方が少し変わりました。
高校3年生になって突然始まるものではないのです。
高校生活の3年間を通して「自分は何を学びたいのか」を考える。
こうした高校生活全体が、大学進学につながっています。
さらに言えば、その土台は小中学校から始まっているのかもしれません。
「自分は何が好きなんだろう」
「何をしていると楽しいんだろう」
「もっと知りたいことは何だろう」
そんな問いを持てる子どもを育てることも、広い意味では進路指導なのだと思います。

進路指導とは「進路を決めてあげること」ではない
今回、大学入試について学んで、私は改めてこう感じました。
進路指導とは、子どもが自分で選択するために、必要な情報を一緒に整理できること。
そのためには、教員自身も少しずつ知識をアップデートしていく必要があります。
すべてを専門家のように知る必要はありません。
ただ、「知らないから、自分が受験した頃の経験だけで話す」ことは避けたい。
現在の大学入試は、私たちが受験した頃とはかなり変わっているそうです。
だからこそ、私自身も子どもたちと一緒に学んでいきたいと思っています。
シリーズ「進路指導ができる教員になろう」
今回は第1回として、現在の大学入試の全体像をまとめました。
しかし、今回私が受講した講義だけでも、
「推薦なら楽」は本当なのか。
総合型選抜では何が見られるのか。
共通テストではどんな力が必要なのか。
模試判定をどう考えるのか。
偏差値以外に何を見て大学を選ぶのか。
大学進学には実際いくらかかるのか。
英検は入試でどう使えるのか。
など、さらに知りたいことがたくさんありました。
次回以降、一つずつ掘り下げていきたいと思います。
目指したいのは、子どもが、「自分はこんなことを学びたい」と言ったときに、「じゃあ、どんな道があるのか一緒に調べてみよう」と言える先生です。
そのために、まず私自身が学んでいきたいと思います。
※本記事は、大手予備校が主催する大学入試に関する講義で学んだ内容をもとに、教員の立場から整理したものです。大学入試制度や各大学の選抜方法は毎年変更される可能性があります。実際の受験では、必ず大学や大学入試センター等が公表する最新の募集要項・公式情報をご確認ください。



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