【40代教員の退職カウントダウン205:退職まで残り2年7か月】
はじめに
「ちゃんと反省しなさい」
「相手の気持ちを考えなさい」
「悪いと思ったなら、ごめんなさいを言いましょう」
学校で働いていると、こうした言葉を使う場面は少なくありません。
子ども同士の喧嘩、暴言、嘘、友達の物を勝手に取ってしまったとき、何か問題が起きれば、教師は子どもに自分の行動を振り返らせ、反省させ、必要なら相手に謝らせます。
私自身も、これまで何度もこうした指導をしてきました。
だからこそ、書店でこの本を見たとき、タイトルにかなり驚きました。
『反省させると犯罪者になります』
「いや、反省させない方が問題なのでは?」おそらく、多くの先生が最初はそう感じるのではないでしょうか。
しかし、読み進めていくと、この本が言いたいのは、「悪いことをしても反省させなくていい」ということではありません。
むしろ逆です。
本当の意味で反省してもらうためには、反省を急いではいけない。
この考え方は、日々子どもと関わっている教員にこそ、一度考えてほしい視点だと思いました。
今回は「教員にこそ読んでほしいシリーズ」として、岡本茂樹さんの『反省させると犯罪者になります』を、学校の生徒指導という視点から紹介します。
私は40代、小学校教員・教務主任(担任兼務)です。2028年3月に正規教員を退職すると決めています。詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯】
『反省させると犯罪者になります』とは?
本書の著者、岡本茂樹さんは臨床教育学を専門とし、大学で研究・教育活動を行う一方、刑務所で受刑者の更生支援にも携わっていました。
本書で特に印象に残るのが、
人は反省を求められると、「相手が求めている反省」を演じるようになることがあるという指摘です。
これは学校でも思い当たることがあります。

子どもは「先生が欲しい答え」をよく知っている
例えば、友達を叩いてしまった子どもに、「叩かれた相手はどんな気持ちだったと思う?」と聞いたとします。
すると多くの子どもは、「痛かったと思います」や「悲しかったと思います」と答えます。
さらに、「じゃあ、どうしたらいい?」と聞けば、
「謝ります」「もうしません」と答えます。
ここまでくれば、学校では一件落着になることもあります。
「ちゃんと反省できたね」
「じゃあ謝りに行こう」
そして、「ごめんなさい」「いいよ」で解決です。
もちろん、こうした指導そのものが間違っているとは思いません。
しかし、こう思ったことはありませんか?
この子は、本当に自分の行動について考えたのだろうか。

もしかすると、「こう答えれば先生に許してもらえる」という正解を答えただけなのではないか。
子どもは大人が思っている以上に、大人が求めている言葉をよく知っています。
これらの言葉を言えることと、本当に自分の行動と向き合えていることは、必ずしも同じではありません。
本書でも、反省を強く求めることで、本当の気持ちに向き合うのではなく、外向けの「反省」を身につけてしまう可能性が指摘されています。

「相手の気持ちを考えなさい」は、本当に間違っているのか
本書の主張で特に衝撃的なのが、問題を起こした人に最初から被害者の気持ちを考えさせない、という考え方です。
学校教育では、「相手の立場に立って考えよう」「相手の気持ちを考えよう」という指導を大切にします。
もちろんそれは大切です。ただ、問題なのは順番な
のだと思います。
例えば、友達とトラブルになり、怒りでいっぱいになっている子どもに、「相手の気持ちを考えなさい」と言っても、その子にはまだ難しい場合があります。
なぜなら、自分自身の気持ちさえ、まだ整理できていないからです。

自分の感情を整理できていない子どもに、いきなり他者の立場に立つことを求めても、教師が期待する答えを言うだけになってしまうかもしれません。
だから、まず必要なのは、相手の気持ちではなく、自分の気持ちを理解すること。
本書が「加害者の視点」から考えることを重視しているのも、ここに理由があります。
問題行動の裏にある「本当は○○したかった」
子どもの問題行動を考えるとき、私はこの視点がとても大切だと感じています。
暴力、暴言、嘘、物を取る、授業を妨害する。
表面的な行動だけを見ると、「困った行動」です。
しかし、その一段下には、「本当は○○したかった」が隠れていることがあります。
例えば、
「本当は仲間に入りたかった」
「本当は認めてほしかった」
「本当は助けてほしかった」
「本当は嫌だと言いたかった」
「本当は自分のことを分かってほしかった」
という思いです。

もちろん、その思いがあれば何をしても許されるわけではありません。
しかし、そこを理解しないまま、「ダメなものはダメ」「反省しなさい」だけで終われば、次に同じ状況になったとき、その子はまた同じ行動を選ぶかもしれません。
本人自身が、「自分はなぜあの行動を選んだのか」を理解していないからです。
「反省させる」のではなく「自分の行動を理解させる」
本書を学校教育に置き換えて考えるなら、私は次のような順番が分かりやすいと思います。
① 何があったのか
まず事実を整理します。
「最初から教えて」
② 自分はどう感じていたのか
本人の感情を言葉にします。
「そのとき、どんな気持ちだった?」
③ 本当はどうしたかったのか
行動の奥にある願いを探します。
「本当はどうしてほしかった?」
④ その行動によって何が起きたのか
行動と結果をつなげます。
「それで○○したら、その後どうなった?」
⑤ 相手から見るとどうだったのか
ここで初めて他者の視点に広げます。
「B君からすると、どうだったと思う?」
⑥ 次はどうするのか
次に使える行動を一緒に考えます。
「また同じくらい腹が立ったら、どうできそう?」
つまり、自己理解 ↓ 行動理解 ↓ 結果の理解 ↓ 他者理解 ↓ 責任 ↓ 次の行動という流れです。
いきなり⑤の「相手の気持ちは?」から始めない。
ここが、本書から学校現場が学べる大きなポイントではないかと考えました。

謝らせることを指導のゴールにしない
もう一つ考えさせられたのが「謝罪」です。
子ども同士のトラブルでは、「ちゃんと謝った?」「仲直りできた?」が解決の基準になりがちです。
A「ごめんなさい」
B「いいよ」
教師「じゃあこれで仲直りだね」
一見、とてもきれいに解決しています。
でも、実際には、Aは納得していない。Bも本当は許していない。
ただ教師がそうさせたから「ごめん」「いいよ」と言っただけ。
そう考えると、教師が目指すべきなのは、「謝らせること」ではなく、「謝りたいと思えるところまで加害者の理解を進めること」なのではないかと思います。

自分がなぜあの行動をしたのか分かった。
その結果、相手に何が起きたのか分かった。
「自分も腹が立っていたけれど、あれはやりすぎたな」
そこまでいけば、初めて、「ごめん」という言葉にも意味が生まれます。
謝罪は指導のゴールではなく、理解した結果として生まれるもの。
これは私自身、この本を読んでかなり考えさせられました。
「反省文を書きなさい」で本当に反省できるのか
本書では「反省文」についても厳しく問い直しています。
学校でも、「今回のことを反省して文章に書きなさい」という指導は、昔ほどではありませんが、今でも時にあります。

しかし、子どもは教師が喜ぶ反省文を書くことができます。
「私は自分勝手な行動をしてしまいました」
「相手の気持ちを考えていませんでした」
「これからは二度と同じことをしないようにします」
立派な文章です。
でも、その文章を書けることと、本当に自分の内面と向き合ったことは別です。
本書では、上辺だけの反省を求めることによって、むしろ本人が自分の本当の気持ちと向き合う機会を失う可能性が論じられています。
「事情を聞くこと」と「許すこと」は違う
ここまで読むと、「それでは加害した子に甘すぎるのでは?」と思う人もいるかもしれません。
それは違います。
例えばA君がB君を殴ったとします。
A君に、「何があったの?」「どうしてそこまで腹が立ったの?」と丁寧に聞く。
それは、「殴っても仕方なかったね」と言うためではありません。
まして、被害を受けたB君を我慢させるためでもありません。
被害を受けた子どもを守ることと、加害した子どもの背景を理解することは両立します。
A君には、「そこまで腹が立った理由は分かった。でも、殴ることは認められない」と伝えればいい。
私はこの、「気持ちは受け止める。でも行為は認めない」という姿勢が、生徒指導ではとても大切だと思本書で再認識しました。

事情を理解することは免罪ではありません。
ただ、再び同じ行動を起こさないためには、本人自身がその事情を理解する必要があります。
本当の反省のために、反省を急がない
『反省させると犯罪者になります』。
タイトルだけを見ると、とても刺激的な本です。
しかし、読み終えて私が感じたのは、「反省させてはいけない」という本ではないということでした。
むしろ、本当に反省してもらうためには、その人自身の気持ちや行動を丁寧に理解する必要がある。ということを伝えている本なのだと思います。
学校では時間がありません。
トラブルが起きても、次の授業があります。
保護者への連絡もあります。
学年や管理職への報告もあります。

だからこそ、「事情を聞く」→「叱る」→「謝らせる」→「はい、解決」となってしまうこともあります。
私自身、そんな指導をしてきたことがあります。
でも、本当に再発を防ぎ、子ども自身を成長させたいのであれば、「反省した?」と聞く前に、「あなたの中で何が起きていたの?」と聞いてみる。その一手間が必要なのかもしれません。
「ごめんなさい」を言わせる前に
子どもが問題を起こしたとき、教師として「正しいことを教えなければ」と思うのは当然です。
でも、その正しさを伝える前に、その子が見ていた世界を少しだけ見せてもらう。
「どうしてそんなことをしたの?」ではなく、
「何があったの?」
「そのとき、どう思っていた?」
「本当はどうしたかった?」
と聞いてみる。
そして本人が自分自身を理解した後で、「じゃあ相手はどうだっただろう」「次はどうしよう」と一緒に考える。
反省させるのではなく、反省できるところまで一緒に考える。
『反省させると犯罪者になります』は、そんな生徒指導のあり方について考えさせてくれる一冊でした。

生徒指導に悩んでいる先生や子どもが同じ問題行動を繰り返し、「何度言っても伝わらない」と感じている先生。「相手の気持ちを考えなさい」と何度も言っているけれど、本当にこれでいいのだろうかと思っている先生。
そんな先生にこそ、一度読んでほしい本です。
そして読み終わった後、次に子どもが何か問題を起こしたとき、教師の最初の一言が、「なんでそんなことしたの!」から、「何があったの?」に変わるかもしれません。
私は、それだけでもこの本を読む価値があると思います。
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