授業で使えるちょっとした小ネタシリーズ⑪ 日本の硬貨・紙幣に隠されたメッセージ

教師のお仕事

【40代教員の退職カウントダウン141:退職まで残り3年1ヶ月】


はじめに|金融教育の導入に「お金のデザイン」という視点を

少し前から、学校教育の中で金融教育の充実が話題になっています。

とはいえ、「投資や金融商品は難しそう」、「いきなり数字や制度の話はとっつきにくい」と感じている先生も多いのではないでしょうか。

そんなときにおすすめなのが、「日本のお金のデザイン」に注目する導入ネタです。

実は、日本の硬貨や紙幣のデザインには、単なる装飾ではなく、

👉 日本がどんな国でありたいか

👉 どんな価値観を大切にしてきたか

という国としてのメッセージがはっきりと込められています。

中学生にも説明しやすく、金融教育の入口として使いやすい内容を、硬貨・紙幣ごとに整理します。

私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
※詳しくはこちら → 【私が退職しようと決意した具体的経緯


① 硬貨のデザインに込められた願い

● 1円玉|若木に込められた「再出発」の願い

1円玉|若木に込められた「再出発」の願い

デザイン:若木

1円玉に描かれているのは、まだ成長途中の若木です。

ここに込められた願いは、

  • 戦後の日本が、これから成長していく国であってほしい
  • 何度でもやり直し、立ち上がれる国であってほしい

というメッセージです。

軽くて小さな1円玉は、「国の出発点」「再生の象徴」とも言える存在です。


● 5円玉|産業がうまく回る国へ

5円玉|産業がうまく回る国へ

デザイン:表→稲穂・歯車・水(波) 裏矢印→双葉

  • 稲穂=農業
  • 歯車=工業
  • 水=漁業
  • 双葉=林業

5円玉には、日本の主要な産業がすべて描かれています。

これは、日本の産業すべてがバランスよく回りますようにという願いの表れです。


● 10円玉|歴史と文化を守る国であるために

10円玉|歴史と文化を守る国であるために

デザイン:京都・平等院鳳凰堂

10円玉には、世界遺産でもある平等院鳳凰堂が描かれています。

ここには、「長い歴史を大切にすること」、「文化的価値を守り続けること」を重んじる国でありたい、という願いが込められていると考えられます。


● 50円玉|品格と調和の象徴

50円玉|品格と調和の象徴

デザイン:菊の花

菊は、日本の皇室の紋章として知られています。

50円玉の菊のデザインは、国としての品格伝統と調和安定した国家運営を象徴しています。

穴あき硬貨でありながら、1円や5円とは異なる「落ち着いた意味」を持つ点も興味深いところです。


● 100円玉|桜が表す日本人の価値観

100円玉|桜が表す日本人の価値観

デザイン:桜

桜は、日本を代表する花です。美しさと同時にはかなさ、この両面を持つ桜は、「永遠ではないからこそ、今を大切にする」という、日本人の価値観そのものを表しているとも言えます。


● 500円玉|信用と責任の象徴

500円玉|信用と責任の象徴

デザイン:桐の花

500円玉は、非常に高度な偽造防止技術が使われている硬貨です。

その背景には、「国としての信用を守る」、「経済大国としての責任を果たす」という強い意思があります。

「なぜ500円玉だけこんなに複雑なのか?」という問いは、金融や信用の話につなげやすいポイントです。


② 紙幣のデザインに込められた願い

● 1000円札|学問と科学を大切にする国へ

1000円札|学問と科学を大切にする国へ

近年の1000円札に描かれているのは、学問や科学分野で日本に貢献した人物です。

ここには、常に国を豊かに、新しくしていくという日本の姿勢が表れています。

たとえば、現在の1000円札に描かれている北里柴三郎は、細菌学の発展に大きく貢献し、破傷風菌の純粋培養に成功するなど、日本の医学を世界水準へと引き上げた人物です。
感染症と闘い、人々の命を守る研究に生涯を捧げました。

その前の1000円札に描かれていた野口英世もまた、黄熱病の研究などで知られる医学者です。
困難な環境の中から努力を重ね、世界で活躍した姿は、「学問によって未来を切り拓く」というメッセージを象徴しています。

このように1000円札は、時代ごとに「科学・医学・知の力で国を発展させた人物」を選び続けてきました。つまり1000円札は、

学問と科学こそが、国を前へ進める原動力である

という、日本の価値観を静かに語っているのです。


● 5000円札|教育と文化、そして平等

5000円札|教育と文化、そして平等

5000円札の人物は、女性の教育や文化の発展に尽力した人物です。

これは、教育の大切さ、文化の継承、男女の平等を重視する社会でありたい、というメッセージとして読み取ることができます。

たとえば、現在の5000円札に描かれている津田梅子は、日本における女子教育の先駆者です。
幼少期にアメリカへ留学し、その後、日本で女子英学塾(現在の津田塾大学)を創設しました。
女性が高等教育を受け、自立して社会に貢献できる道を切り拓いた人物です。

その前の5000円札に描かれていた樋口一葉は、明治時代を代表する女性作家です。
『たけくらべ』などの作品を通して、当時の社会や人々の暮らしを描き、日本文学の発展に大きな足跡を残しました。

このように5000円札には、「女性の活躍」「教育」「文化」といったテーマを象徴する人物が選ばれてきました。

つまり5000円札は、

すべての人が学び、文化を育み、社会に参加できる国でありたい

という、日本の願いを静かに伝えているのです。


● 1万円札|経済と道徳の両立

1万円札|経済と道徳の両立

1万円札には、近代日本の発展に大きく貢献した人物が描かれています。

単なる経済成長ではなく、経済と道徳のバランスを大切にする国であることを示している点が特徴です。

たとえば、長年1万円札の肖像として親しまれてきた福沢諭吉は、慶應義塾を創設し、日本に近代的な教育思想を広めた人物です。
『学問のすゝめ』の中で「天は人の上に人を造らず」と説き、自立と学問の重要性を強調しました。
経済的な発展だけでなく、一人ひとりが学び、考え、責任を持つ社会を目指した点に大きな意味があります。

そして、現在の1万円札に描かれている渋沢栄一は、「日本資本主義の父」とも呼ばれる実業家です。
約500もの企業や社会事業の設立に関わり、日本の近代経済の基盤を築きました。
しかし彼は、利益追求だけを目的とするのではなく、「論語と算盤」という言葉に象徴されるように、道徳と経済の両立を重視しました。

このように1万円札には、「経済を発展させる力」、「そしてそれを支える倫理観」を体現した人物が選ばれています。

つまり1万円札は、

豊かさとは、単なるお金の量ではなく、道徳と責任を伴った発展である

という、日本が大切にしてきた価値観を静かに語っているのです。


③ 硬貨・紙幣に共通する日本の価値観

日本のお金のデザインから見えてくる共通点は、次のような価値観です。

  • 🌱 成長と再生
  • 🤝 調和と協力
  • 📚 学問・教育・文化の重視
  • 🏯 歴史と伝統への敬意
  • 💴 信用を重んじる経済観

「お金」は、単なる交換の道具ではなく、国の思想や願いを映すメディアだと言えるでしょう。


④ 授業で使える一言まとめ(板書用)

日本のお金のデザインは、「便利さ」だけでなく、どんな国でありたいかという願いを形にしたもの。


おわりに|金融教育の“入口”として

投資や税の話に入る前に、まずは「身近なお金」に目を向けること。

この小ネタは、

  • 金融教育の導入
  • 主権者教育
  • 文化理解
  • 歴史教育

のどれにも自然につなげることができます。

「授業の導入で使えるちょっとした小ネタ」として、ぜひ子どもたちに披露してみてください。

社会の授業はネタ勝負なところがあると思います。よければ以下の書籍を参考にしてみてください。

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「授業で使えるちょっとした小ネタシリーズ」

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