【40代教員の退職カウントダウン108:退職まで残り3年4ヶ月】
■ はじめに
教員の世界にも、誰にも語られない恋が生まれては消えていきます。
「HOW TO 教員の恋愛シリーズ」は、私自身が20年以上の現場で見聞きした“教員ならではの恋模様”を紹介する連載です。
私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
※詳しくはこちら → 【私が退職しようと決意した具体的経緯】
第5弾となる今回は、愛着アタッチメント(Attachment)理論を切り口に、私の後輩女性教員が経験した「苦しい恋愛」を取り上げます。
恋愛が苦しい。相手と距離の取り方がわからない。付き合っても長続きしない。
そんな思いをしたことはありませんか?
愛着理論の研究によれば、恋愛を安定して楽しめる「安定型」は全体の50%。残りの半分は、なんらかの“恋愛が難しくなる特性”を持っているとされます。
今回はその中でも 「回避型アタッチメント」 に分類されるであろう、後輩・山口先生のエピソードを紹介します。この記事が、あなた自身の恋愛の理解や、愛着に課題を抱える子どもへの関わりのヒントになれば幸いです。
■ 登場人物
● 山口先生(30代女性 仮名)

- 学生時代はバスケットボールの県選抜に選ばれるほどスポーツ万能
- 新人の頃から学級経営の腕は一流
- 保護者からの信頼も厚い
- 自分にも他人にも厳しい一面を持つ
山口先生と私が同じ5年生を組むことになったのは、私が転勤した年。2クラスしかない5年生に37歳の私と34歳の山口先生。私はその人事に不思議さを感じていました。
当時30代半ばの教員は“氷河期採用世代”で人数が少なく、本来であれば学年主任を務めるのが自然。しかも彼女は学級経営の腕は一流と聞いています。
ただ、少し経つと理由が見えてきました。彼女は後輩と組むには“怖すぎるほど優秀”な面があり、若手が学年を組むと萎縮してしまい、育たないという事情があったようです。
幸い、私は彼女の得意なバスケットボールの指導者として県内でも名が売れていたことと、彼女が取り組んでいた「学び合い」の実践を私も先行していたこともあり、“尊敬する先輩ポジション”として良い関係が築けました。
私と山口先生が取り組んでいた「学び合い」についてはこちらの記事から↓
【教員の教養シリーズ:西川純の「学び合い」とは?】

■ 彼女が抱えていた「生きづらさ」
しばらく一緒に働いて気づいたのは、彼女には 周期的に精神的に不安定になる時期 があるということ。
- 職員室で誰とも話さない
- 雑談が一切できない空気になる
- 教室にこもって黙々と仕事を続ける
子どもへの対応は変わらず完璧、“誰にも弱さを見せない人”でもありました。

ただ、私には少しずつ心を開いてくれ、「職員室で唯一の話し相手だね」と周りから言われるほど仲の良い関係になっていきました。
式日にランチに行く 仕事帰りにコーヒーを飲んで雑談 プライベートの悩みを話す
そんな時間が続いたころ、彼女の恋愛の話も聞くようになります。
■ 山口先生の恋愛 ―「1年で終わる恋」の正体
彼女は学生時代に2人、社会人になってから4人と交際経験があるものの、どれも1年前後で自分から別れを告げてきた と言います。
理由は2つ──
- 相手を急に嫌いになってしまう
- 好きだけど“必要以上に一緒にいたいと思えなくなる”
恋を楽しむより、苦しさのほうが勝ってしまう恋愛。話を聞いて、愛着理論について学んでいた私は、山口先生が 典型的な「回避型アタッチメント」 の傾向があるということに気づきました。

■ 回避型アタッチメントの特徴
愛着障害という言葉を聞いたことがあるでしょうか。恋愛のような大切な人との繋がりに何らかの支障が出る障害です。
「障害」と付くために特別なもののように思われがちですが、実はこれは発達障害と同じく“スペクトラム(連続体)”として捉える必要があります。
そもそも愛着とは、幼少期に養育者(親など)との関わりの中で形成される“人とのつながり方のクセ”のこと。
この愛着が十分に育たなかった場合、大人になってから人間関係や恋愛でつまずきやすい特徴として現れることがあります。これがいわゆる「愛着障害」と呼ばれる状態です。
そして重要なのは、完全に安定した愛着(安定型)を持つ人は人口の50%ほどにすぎないという点です。つまり、残りの半分の人は、程度の差こそあれ愛着に由来する“生きづらさ”を抱えていることになります。
こうした背景を理解するための理論が、心理学で広く用いられている「愛着理論(アタッチメント理論)」です。
愛着理論「回避型」の人の特徴は以下の通りです。
- 親密さが苦手、人と深く関わることがストレス
- 自立的で、他人に頼れない
- 感情表現が苦手で「冷たい」と誤解されがち
- ひとりの時間がないとしんどい
- 束縛を嫌い、一定の距離を保とうとする
山口先生の行動は、驚くほどこれに当てはまっていました。
■ そして、彼女は突然消えた
翌年、彼女は別の学校へ異動します。
異動後も、頻繁にLINEを送りあったり、何度も仕事終わりにコーヒーを飲みに行ったり、新しい学校の愚痴を聞いたりと関係は続いていました。
しかしある日──
山口先生のLINEアカウントが突然消えていました。
ブロックか、削除か。特に理由を告げられることもなく。ただ私は、思い当たる節があり、追いかけませんでした。
後日、共通の知人から彼女が 私に好意を持っていた と聞かされます。
私は既婚者。彼女の好意に薄々気づきながらも距離を取らなかった自分を、今では「ずるい自分」だったと振り返っています。
おそらく彼女の愛着スタイルからすると、私の存在はいつしか“回避すべき対象” になったのでしょう。
■ そして彼女は、“安定型”の人と結婚した
異動から4年後。山口先生は結婚しました。
お相手は、私も知っているバスケット関係の後輩。非常に温厚で「安定型」アタッチメントに分類されるであろう先生です。共通の知人の紹介だったとのこと。
愛着理論では、回避型の人が幸せになるには“安定型”のパートナーが必要 とされています。
少し寂しさはありましたが、心から「良かった」と思いました。

■ 私自身も「不安型アタッチメント」
実を言うと、私自身にも 重度ではないものの、不安型アタッチメント の傾向があると自己分析しています。というよりも、私が愛着理論に興味を持ち、真剣に学んだのは自分の恋愛が苦しかったことに起因します。
愛着理論「不安型」の特徴は
- 相手の顔色を過度に気にする
- 自己肯定感の低さ
- 情緒不安定になりがち
- 相手に依存しやすい
- 愛情の試し行動をする
- 自己犠牲的になりやすい
後から思うと、山口先生に対して踏み込みすぎた「ずるい行動」も、“自分の愛着性”が原因の一つでしょう。

恋愛は、自分のアタッチメントを知ることで初めて、適切な距離の取り方がわかっていきます。
今、恋愛が苦しい人は愛着理論を学び、自分の恋愛を客観視することで、その苦しさを少しだけ和らげることができると思います。
また、私たちの直面する子どもたちの実に半分が、スペクトラムではあるものの、何らかの愛着のクセをもっているという事実は教師として押さえておきたいところです。
理論を学ぶことで何らかの手立てを講じることができるようになるかもしれません。クラスで一番の問題児、愛着障害ではありませんか?
■ おわりに
山口先生の恋は、長続きしない恋愛の典型的なパターンでした。けれども、その背景には 幼少期から続く愛着のクセ があり、本人の努力だけではどうにもならない部分も含まれています。
愛着理論を知ることは、
- 自分自身の恋愛の苦しみを理解する
- 子どもの行動の背景を知る
- 学級経営のヒントになる
こうした大きな助けになります。もし興味があれば、まずは自分のタイプを知ることから始めてみてください。
次回は、私自身も未だに信じられないほど慎重すぎる「奥手同士の恋」を紹介します。
どうぞお楽しみに。



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