HOW TO 教員の恋愛シリーズ③失恋は校長先生のお話で

教師のお仕事

【40代教員の退職カウントダウン106:退職までのこり3年4ヶ月】

はじめに

職員室の片隅で生まれる、誰にも語られない恋模様を紹介する「HOW TO 教員の恋愛シリーズ」。

第3弾は、私自身のお話です。

私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
※詳しくはこちら → 【私が退職しようと決意した具体的経緯

タイトルの通り、私の若かりし頃の恋愛は、校長先生の口から突然発表されるという意外な形で幕を下ろしました。

登場人物

私(24歳)

私(24歳)

教員2年目。大学からの彼女と恋愛中でしたが、始めたばかりの一人暮らしと前年度学級崩壊学年の担任で疲弊し、ゴールデンウイークに失恋。教員人生の中でも精神的にもかなり追い込まれていた時期です。


石田先生(29歳)

石田先生(29歳)

音楽専科の非常勤講師で、社会人7年目です。清楚で物腰が柔らかく、いつ見ても身だしなみが整っている「音楽の先生らしい先生」でした。同じ学校に長く勤務していたため、職員室の人間関係にも精通していました。

失恋と疲弊の5月、石田先生から届いたメール

3年間付き合った大学生の彼女との別れは、思った以上に大きなダメージでした。

仕事だけは落とさないように必死でしたが、家に帰ると何も手につかない状態でした。

そんな変化に、一番に気づいて声をかけてくれたのが石田先生でした。非常勤なのでいつも早く帰る石田先生から、ある日お昼過ぎに初めてメールが届きました。(当時まだLINEはありません)

「最近、体調悪そうに見えるけど大丈夫?学級経営、大変なんでしょ。」

同年代の同僚がいない職場で、忙しさから友人にも会えずにいた私は、そのメッセージにとても救われた気がしました。

そこで初めて、メールで石田先生に失恋したことを打ち明けました。すると石田先生は「元気づけてあげるよ」と食事に誘ってくれたのでした。

メッセージにとても救われた気がした

オシャレなワインバーで、初めて“救われた”気持ちに

石田先生は、同じ学年の30代後半の女性の先生も誘ってくださっていました。もちろんその時点で、石田先生が“同僚として心配してくれた”のだとよくわかります。

3人で行ったワインバーは、当時の私が一人で入るには到底勇気の出ないような場所でした。

石田先生たちは、私の話を真剣に聞いてくれました。

彼女のこと。 大変な学級経営こと。 初めての一人暮らしの苦労。

「大変だったね」と、何度も。

その夜は、「異性として」というより、職場で初めて“味方”ができたような安心感に包まれました。

石田先生たちは、私の話を真剣に聞いてくれました。

少しずつ近づく距離

その後も、石田先生を含め3〜4人で食事やカラオケに行ったり、メールで他愛ない話をしたりするようになりました。

2学期になると大変だった学級経営も軌道に乗り、石田先生の音楽の授業にT2として入る機会が増えました。

授業の打ち合わせや生徒指導の情報交換などで話す機会も増え、自然と距離が縮まっていきました。

そして気づくと、私は石田先生のことが好きになっていました。

私は石田先生のことが好きになっていました

思い切って誘った「紅葉ドライブ」

紅葉が見頃の季節になり、私は思い切ってメールを送りました。

今度の休日、二人で一緒に紅葉を見に行きませんか?

返事はすぐには来ませんでした。

数日後、「予定がわからないから考えさせて」と返信があり、その後1週間ほどメールは途絶えました。職場でも少し距離を感じました。

(やっぱり難しかったのかな…)

そう諦めかけていた金曜日。「明後日の日曜日なら空いてるよ。どう?」と返事が来ました。

最高に嬉しかったのを覚えています。

忘れられない一日と恋の進展

当日は有名な紅葉スポットを巡るドライブを楽しみ、夕食も一緒にとりました。

私は「恋が前に進んだ」と確信していました。

「今日は楽しかったよ。本当にありがとう」

石田先生から届いたメールが嬉しくて、何度も読み返しました。

有名な紅葉スポットを巡るドライブを楽しみ、夕食も一緒にとりました

しかし、教員には教員の現実があります

紅葉が散る頃になると、怒涛の成績処理の季節になります。当時の通知表はゴム印と手書きの所見で、とにかく時間がかかりました。忙しさの中で余裕がなくなり、石田先生との距離は思うように縮まりませんでした。

冬休み前に改めて食事にでも行きませんか?と誘いましたが、良い返事はもらえませんでした。

そして「終業式の日」

2学期終業式の朝、勤務日ではないはずの石田先生が学校にいました。

少し違和感を覚えつつも時間は過ぎ、終業式、打ち合わせが終わり、校長先生の挨拶が始まりました。

「今学期もお疲れ様でした。最後に、皆さんにお伝えしたい“おめでたい話”があります。」

次の瞬間、校長先生の口から発表されたのは、

石田先生がクリスマスにご入籍されます。」という言葉でした。

校長先生の口から発表されたのは、
「石田先生がクリスマスにご入籍されます。」という言葉でした。

石田先生の結婚はおろか、交際相手がいたことも職員室では一部を除いて知られていなかったので、ざわめきとともに自然と大きな拍手が起こりました。

私は驚きながらも、不思議と冷静でした。職員室の祝福ムードの中で、石田先生は私と目を合わせませんでした。

その夜、お祝いのメールを送ると、

あなたの気持ちには気づいていたよ。伝えていなくてごめんね。紅葉、本当に楽しかったよ。

と返ってきました。

その時、ようやく本当に失恋したのだと実感しました。

若かった自分への“洗礼”

24歳の私には、29歳の石田先生はとても大人でした。距離感も、恋愛の温度も、社会人としての経験も。

不思議なことに、大きな心のダメージは残りませんでした。「世の中って、うまくいかないものだな」と冬の帰り道で思ったことをよく覚えています。

ただ、なぜあの時婚約者がいながら、そして私の気持ちに気づいていながら二人での紅葉デートに付き合ってくれたのでしょう?あの時の石田先生の心の内は、40歳を過ぎた今も謎のままです。

翌年、石田先生は妊娠がわかり、年度途中で退職されました。

それ以来20年、会っていませんが、どこかで元気に過ごしているのだろうと思います。

教員恋愛HOW TOとして言えること

  • 職場の“支え”を恋と錯覚しやすい
  • 多忙な時期は関係が止まりやすい
  • 気遣いと好意の線引きが難しい
  • 年齢差や立場の差が距離感を複雑にする
  • タイミングがすれ違うと一気に終わる

若手の頃の私の経験は、こうした“教員恋愛の構造”をよく表していたと思います。

次回予告

HOW TO 教員の恋愛シリーズ 第4弾「コロナ禍のリモートデート編」です。お楽しみに。

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