【40代教員の退職カウントダウン103:退職までのこり3年4ヶ月】
◆ はじめに
先日、夜の職員室で職場内カップルが誕生したと聞きました。昨年度からこっそり付き合っていて、結婚を意識し始めたので公表したのだそうです。
……まあ、全員知っていましたけどね。
私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
※詳しくはこちら → 【私が退職しようと決意した具体的経緯】
20年以上教員をやっていると、残業の静かな夜に恋愛相談をされたり、知らぬ間に職員室中に“恋の噂”が広まったりする場面に当たります。
先生たちだって人間です。恋もするし、悩むこともある。
そんなわけで今回から始まる「HOW TO 教員の恋愛シリーズ」。
職員室で本当に起きた恋の物語を、私が見聞きした範囲で記録していきます。
誰かの教員人生のヒントになれば嬉しいです。今回の第1弾は——修学旅行の下見で恋が始まった二人の話です。
◆ 登場人物
■ 浜田さん(仮名)

30代半ば。中堅の6年生担任。
学年主任クラスの力量があり、生徒指導の経験も豊富。
裏表がなく、まっすぐで、ちょっと不器用なタイプ。
■ 小林さん(仮名)

20代後半。初任校で5年目の若手教員。
仕事熱心でまっすぐな反面、責任を抱え込みがち。
人に甘えるのが下手で、しっかりしていると見られがち。
私は当時、二人の真正面の席に座っていて、飲み会にもよく行く仲でした。
◆ 恋の始まりは“年度途中の崩壊”から
恋は、同じ学年を組んだ6年生の年から始まった——……と言いたいところですが、実は前年度に遡ります。
その年、小林さんは4年生の担任でした。けれど、学年主任があまり機能せず、困難行動のある児童が小林さんのクラスに集中。若手の小林さんには重すぎる状況でした。
さらに追い討ちをかけるように、年度途中でその学年主任が心の病で休職してしまいます。
代わりに入ったのは、担任経験もない年下の講師の先生。必然的に、小林さんの負担は倍増します。
授業準備、学年行事、保護者対応、学年調整……若手に抱えられる量ではありません。

その頃の小林さんは、毎日やつれた顔をしていました。私も何度か声をかけましたが、夜の職員室でうつむく姿が、今でも忘れられません。
◆ 救いの手を差し伸べたのは、5年生主任の浜田さん
そんな時、小林さんの様子に気づいて声をかけたのが浜田さんでした。
- 問題の男子の指導を一緒にする
- 総合の計画を見てあげる
- 校外学習の立案を手伝う
いつの間にか、浜田さんは小林さんの“影の学年主任”になっていました。

私はある夜、浜田さんに聞きました。
「ねえ、浜田。小林さんのこと好きなん?」
すると彼は即答。
「いやいや!困ってるから助けてるだけです!」
……後日、「下心はあった」と笑いながら認めましたけどね(笑)
私を含めた3人で何度か食事へ行き、小林さんは少しずつ笑顔を取り戻していきました。
◆ 翌年度、二人は同じ6年生学年を担当
つらい1年間を乗り切り、小林さんは次年度6年生へ。
浜田さんは持ち上がりで6年生の学年主任。自然と顔を合わせる時間が増えました。小林さんの表情は明るく、授業にも前向き。私も見ていて「この一年は大丈夫」そんな安堵が伝わってきました。
一方、浜田さんに試練が訪れます。
転勤してきた新しい教頭が、浜田さんにやたらと厳しくあたるようになったのです。
- 学年計画に細かすぎる口出し
- 教育論文への過度なチェック
- 会議での指摘が刺さる

教頭側にも“育てたい”という思いはあったのでしょうが、浜田さんにはそれが届きませんでした。
その頃、私の仕事の半分は浜田さんの愚痴を聞くことでした(笑)
そして浜田さんを精神的に支えていたのが、小林さんでした。落ち込む浜田さんの隣で、計画を練り直し、励ます小林さん。
二人はゆっくりと距離を縮めていきました。
◆ 恋の決定打:修学旅行の“個人下見”
浜田さんは仕事熱心。秋の修学旅行を万全にするため、個人的に夏休みに現地へ下見に行くことにしました。
「小林さんは行かなくていいよ」と言ったらしいのですが、小林さんは「私も行きます」と即答。
こうして二人の“休日ドライブ”が決まりました。

猛暑の中の長距離運転。渋滞に巻き込まれ、帰りは日暮れに。サービスエリアで小林さんがコーヒーを買ってあげた時——事件は起きました。
浜田さん「小林さん……仕事モード、オフにしていい?」
小林さん「え……?」
次の瞬間、浜田さんは小林さんの手をそっと握りました。
すでに好意を持っていた小林さん。
そのまま、二人は静かに付き合い始めたのです。
この話は、付き合った報告を聞いた食事会で、小林さんが赤面しながら語ってくれた顛末です。
◆ なぜ二人は惹かれ合ったのか?(恋愛心理学的考察)
二人は“自然と”惹かれ合ったわけではありません。心理学的に見ると、いくつもの要素が重なっています。
① 弱っている時に優しくされた
人は困難な時に助けてくれた相手に特別な感情を抱きやすい。
② 共通の敵(教頭)が出現
人は“同じストレス源”を共有すると結びつきが強まる。
③ 一緒に過ごす時間が増えた
頻繁に顔を合わせると好意が増す「単純接触効果」。
④ 6年生という“戦友”が生まれる環境
達成感や困難を共有することで、恋は加速する。
教員の恋愛ではよく見られる構造です。ちなみに恋愛心理学はとても奥が深く、高学年や中学生の担任を持った時に知っておくと役に立ちます。私の読んだおすすめ書籍を紹介しますので、よければ勉強してみてください。
◆ 二人のその後
順調に見えた二人ですが、転機は小林さんの転勤でした。
付き合って1年半後、小林さんは希望して中学校へ異動。その転勤先で、後の夫となる山崎さん(仮名)と出会います。
中学校の授業づくりや生徒指導に悩む小林さん。小学校経験しかない浜田さんとは会話も噛み合わなくなり、徐々にすれ違いが増えていきました。
小林さんは山崎さんに支えられ、やがて新たな人生を選ぶことになりました。
◆ エピローグ:恋は終わり、仕事は続く
小林さんは結婚後、すぐに子宝に恵まれ、現在は育休中です。
浜田さんは現在も独身ですが、教育論文で何度も受賞し、学校でも中心的存在です。
恋は終わっても、二人はそれぞれの人生で光っています。
教員の恋愛に“定番の幸せパターン”はありません。
けれど——
弱った時に支え合い、困難を乗り越える中で芽生えた恋は、確かに素敵なものでした。
私自身は浜田さんも小林さんも、仲のいい後輩なので、その後の人生を応援しています。

次回の第2弾は、
「最初の印象は最悪だった2人が、まさかの結婚へ——まるで少女漫画のような教員ラブストーリー」
をお届けします。どうぞお楽しみに。



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