【40代小学校教員の退職カウントダウン45:退職までのこり3年6ヶ月】
はじめに:教員不足と部活動問題
「教員不足待ったなし!」「教員採用試験の倍率過去最低!」──こうしたニュースを耳にしない日はありません。教員不足の背景には多くの要因がありますが、その一つに確実に挙げられるのが部活動の負担です。
私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
私個人の考えとしては部活動という制度は一刻も早く整理するべきものだと強く考えています。
ただ、実は私は教員生活22年のうち20年を部活動に関わってきた、いわゆる「BDK(部活大好き教員)」でもあります。
制度としては反対、でも部活動指導を「楽しい」と感じる側面があるのも事実です。
今回は、その矛盾ともいえる心情を正直に書き、部活動問題を考える視点の一つとしてお伝えしたいと思います。
私の部活動指導のあゆみ
私の勤める市では小学校にも部活動があります。学生時代にバスケットボールをしていた私は、新任の年からずっと小中のバスケットボール部を担当してきました。
新任時に出会ったバスケ指導のレジェンド的な先生から多くを学び、青春を捧げるように部活動を指導してきました。
結果も出ました。市内大会の決勝進出は当たり前、中学校では地区大会を勝ち上がり、全県大会出場も何度も経験。
教え子には名門高校のエースや女子プロリーグの選手を排出、年代別ではありますが日本代表候補にまでなった子もいます。部活動は私の教師としてのアイデンティティの一つであり、教師としての成長ややりがいを支えてくれる存在でした。
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部活動は本当に楽しいのか?
「部活動が楽しいなんて信じられない」と思う先生もいるでしょう。しかし、確かに一部の教員にとっては、部活動は何よりも楽しいものです。だからこそ部活動問題の議論がかみ合わないのです。
部活動問題を真剣に考えるなら、「時間外労働なのに楽しい」と本気で思っている教員がいるという前提を無視できません。では、なぜ楽しいのか?その理由を私なりに整理します。
部活動が楽しい理由3つ
1. 努力が結果となって現れる
授業や学級経営の成果は、子どもの成長や学習の様子など、目に見えにくく曖昧なものです。自己満足なのでは?と言われれば反論は難しいでしょう。
しかし部活動は違います。大会やコンクールという明確な結果が出るのです。自分の努力の成果が結果となって現れるのは、子どもに限らず嬉しいものです。
私も若い頃、市内大会で3年連続優勝したときには「自分には指導の才能がある」と勘違いしたほど、結果が教師としての自分の自己肯定感を強烈に高めてくれました。
2. 子どもたちが自分を求めてくれる
学級は子どもたちが選んで集まった場所ではありません。しかし部活動は違います。子どもたちは自分の意思で集まり、上達を望んでいます。
顧問に指導力があると感じればそれを信じ、求めてくれる。その関係性が純粋で濃密なのです。

3. 引退試合は卒業式に匹敵する感動
卒業式は教師にとって特別な場ですが、部活動の引退試合も同じくらい感動があります。泣きながら「先生、ありがとうございました」と伝えられたときは、すべての苦労が報われたと感じました。

無給・時間外でも続けられる理由
「なぜ無給に近い状態で続けられるのか?」
答えは単純で、部活動が趣味そのものだからです。これはBDK(部活動大好き教員)仲間からも批判がありそうですが、私は本質がここにあると思っています。
釣り人が高価な竿を買って海へ行くように、ツーリング好きがバイクに投資するように、BDKはシューズやボールを持って体育館に行くのです。
しかも表向きは「仕事」として趣味ができてしまう──ここに制度としての大きな問題点がはらんでいるのです。
土日の「趣味」で仕事に影響が出てしまっては言い訳のしようもありませんが、土日の「仕事」で疲れているのは、周りにも自分自身にも言い訳が立ってしまいます。
部活動の制度としての問題点を昔から指摘してくださっている内田先生の著書です。首がもげるほど頷きながら読みました。部活動問題に関心のある人は一読の価値ありです↓
制度としての部活動の問題点
ここまで書くと私は肯定派に見えるかもしれませんが、何度もいうように部活動の制度自体は反対で、できるだけ早く整理すべきだと思っています。
なぜなら、この制度は教育現場の持続可能性を壊しているからです。
- 教員のワークライフバランスを崩す
- 生徒の経験が顧問の力量や熱量に依存する
- 子どもに対する安全や人間関係への配慮義務の増大
- 担任業務との二重負担
これらを放置すれば、教員不足はますます深刻化し、教育現場は崩壊するでしょう。

これも前出の内田先生の著書です。少し難解なところもありますが、どちらも部活動問題を考える上でおすすめの一冊です。
まとめ:BDKだからこそ見える「楽しさ」と「危うさ」
私は幸運にも、バスケ指導を学べる先輩に恵まれ、妻からも理解を得られました。結果を出せたこともあり、転勤しても第1希望であるバスケットボール部の顧問に着任し、経験のないスポーツの顧問をしたことはありません。
その環境があったからこそ、部活動に多くのリソースを注ぎ、やりがいを得られました。
ですが、この条件が揃わない先生に同じ負担を強いるのは無理があることは重々承知しています。
部活動には「結果が出る喜び」「子どもに求められる喜び」「感動」がある一方で、制度としては無理がある。だからこそ、改革は避けられません。
次回は「それでもやっぱり部活動は廃止されるべき理由」について、BDKの私の考えをお伝えします。
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