生成AIと教育|文科省主催の学習会を受けて、現場の教員として考えたこと

教師のお仕事

【40代教員の退職カウントダウン137:退職まで残り3年1ヶ月】

はじめに|「生成AI、正直どう向き合えばいいのか分からない」

生成AIについて、

  • 「危険だから禁止すべき」
  • 「使わないと時代遅れになる」

そんな極端な意見が、学校現場でも飛び交っています。

正直なところ、私自身も以前は「学力をつけるのに不要では?」「現場は理想通りにきれいにいかない」という気持ちを持っていました。

そんな中、今年度は文部科学省主催の生成AIに関する学習会に夏と冬に2度参加し、国の考え方、先行実践校の取組、専門家の議論をまとめて聞く機会がありました。

この記事では、「国は何を考えているのか」「現場の実践はどうなっているのか」「私自身が一教員として、どう受け止めたのか」を、できるだけ分かりやすく共有します。

私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
※詳しくはこちら → 【私が退職しようと決意した具体的経緯


なぜ今、生成AIが教育で議論されているのか

研修の冒頭で繰り返し語られていたのは、生成AIの話は 「技術の話」ではなく「社会の話」 だという点でした。

背景にあるのは、次のような変化です。

  • 生産年齢人口の減少(2040年問題)
  • AIによる仕事の自動化・再編
  • フェイク情報の拡散と民主主義への影響

こうした社会の中で、「情報をどう使い、どう判断するか」という力が、これまで以上に重要になっています。

そのため中央教育審議会でも、単なるICT操作ではなく探究につながる「質の高い情報活用能力」の育成が議論されています。

探究につながる「質の高い情報活用能力」

文科省が示している生成AI活用の基本的な考え方

学習会では、文部科学省の「生成AI利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を軸に、次の視点が共有されました。

① 人間中心の原則

生成AIはあくまで道具

最終的に考え、判断し、責任を取るのは人間です。

② AI活用が目的にならないこと

「AIを使ったかどうか」ではなく、学びが深まったかどうかが最優先。

③ 学習のパートナーとしてのAI

答えを出す装置ではなく、思考を揺さぶる相手として使う。

④ 教師の役割はむしろ重くなる

AIが便利になるほど、

  • どこで使わせるか
  • どこで止めるか
  • どう振り返らせるか

という専門的判断が求められます。

正直に言えば、教師の力量差がより見えやすくなると感じました。

生成AIはあくまで道具。

実際の学校現場ではどう使われているのか

小学校の事例|印西市立原山小学校

印象的だったのは、いきなり使わせていない点です。

  • まずAIの仕組みやリスクを学ぶ
  • 次に教科で限定的に活用
  • 最後に日常的な利用へ

特に大切にされていたのが、このサイクルです。

自分で考える→ AIを使う→ もう一度、自分で考える

AIの答えを「正解」ではなく「たたき台」として扱う指導が徹底されていました。

また、コピペ問題などの課題が出たとき、教師が一方的に禁止するのではなく、児童自身がルールを見直すという点も印象的でした。

教師が一方的に禁止するのではなく、児童自身がルールを見直す

一人一台端末が整備され、小学生でも日常的にスマートフォンに触れる時代において、生成AIを一律に禁止することは、もはや現実的とは言えません。

これからは、使わせるか・使わせないかではなく、子どもたちと共に考え、活用の意義を共有していくことがより重要になってきます。

学習会のグループディスカッションでご一緒した先生が紹介してくださった、子どもへの指導の言葉がとても印象に残っています。

「持久走の授業では、自転車や車を使えば楽に走れるよね。でも、使わないよね。それは、持久走には“体力をつける”という目的があるからだよ。生成AIも同じ。楽だから使うのではなく、どんな目的のために使うのかを考えることが大切なんだよ」

生成AIを“便利な近道”としてではなく、学びを深めるための道具として捉える視点を、子どもにも分かりやすく示した、非常に示唆的な言葉だと感じました。

生成AIを“便利な近道”としてではなく、学びを深めるための道具として捉える視点

中学校の事例|甲州市立塩山中学校

中学校では、校務と学習の両面で活用が進んでいました。

校務面

  • 文書作成
  • 教材のたたき作成
  • クイズ・英文例文の生成

→ 時間削減により、授業の質向上につなげている。

時間削減により、授業の質向上につなげている

学習面

中学校では、校務と学習の両面で活用が進んでいました
  • 英作文の添削
  • 数学の類題作成
  • 自分の理解度に応じた練習

一方で、「考える前にAIに聞いてしまう」という課題も当然出てきます。

そのため、

  • AIの回答を説明させる
  • なぜその答えになるのかを言語化させる

など、アウトプットの質を重視した指導が行われていました。

アウトプットの質を重視した指導

良い実践に共通していた4つの視点

パネルディスカッションで整理されたポイントは、現場の先生にとっても示唆的でした。

  1. 責任ある活用  AIの限界や誤りを理解しているか
  2. 深い学びへの接続  知識止まりで終わっていないか
  3. エージェンシーの育成  自分で目標を立て、選択しているか
  4. 学校内での共有  一部の先生だけの実践になっていないか

どれもAI以前に大切だったことが、より問われていると感じました。

AI以前に大切だったことが、より問われている

研修を通して、私が一番考えさせられたこと

生成AIを使うと、レポートや成果物は「それっぽく」なります。

でも、それが本当に学びにつながっているかは、別問題です。

AIと比較することで、逆に浮き彫りになるのは、

  • 問いを立てる力
  • 試行錯誤を楽しむ姿勢
  • すぐに答えが出ないことに耐える力

これは、人間にしか育てられない力だと感じました。

人間にしか育てられない力

おわりに|「AIに置き換えられる」か「使いこなす」か

研修全体を通して強く感じたのは、

生成AIを拒否するかどうかではなくどう使いこなすかが問われているということです。

AIに振り回されるのではなく、AIを使って人間としての力を拡張する

教師も、子どもも、「分からないことを一緒に考え続ける存在」でありたい。

そんな方向性を、この学習会は示していたように思います。

生成AIを拒否するかどうかではなくどう使いこなすかが問われている

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