【40代教員の退職カウントダウン113:退職まで残り3年3ヶ月】
■ はじめに
教員の恋愛は、表に出にくいだけで “人間ドラマの宝庫” です。
このシリーズでは、教員生活の裏側でひっそりと生まれる恋模様を描いてきました。
今回のテーマは 「いけない恋」。
とはいえ、もちろん、不倫を肯定するものではありません。
ただ、長いこと学校現場にいると、“誰かの心の隙間に入り込む恋” を、事故のように見聞きすることがあります。そういった職員室での実例を知っておくことが、人の道に背く恋の予防になるではないかと信じてまとめました。
私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
※詳しくはこちら → 【私が退職しようと決意した具体的経緯】
これは、30代前半の頃、私が偶然立ち会ってしまった出来事と、その後に明かされた「真実」の記録です。

■ 登場人物
村山先生(仮名/34歳)
・中学校技術科教師
・190cm近い長身で、眼鏡が似合うインテリタイプ
・妻と小1の娘と3人暮らし

安藤先生(仮名/24歳)
・採用2年目の音楽専科講師
・明るく素直で、生徒からは男女問わず好かれるタイプ
・一方で、年配女性グループからは疎まれていた

西山先生(仮名/56歳)
・体育科の大ベテラン女性教員
・バレーボールの部活動で全国大会に導いた経験あり
・管理職も気を遣う“職員室最大派閥のボス”
・村山先生と犬猿の仲

■ うわさのはじまり
私がその中学校に着任したのは安藤先生赴任から2年目。
学校に入って最初に“職員室の力関係”を教えてくれたのが、同年代の仲間でした。
「西山先生には逆らわない方がいいよ。何せこの職員室の派閥のボスだからね。」
確かに西山先生には管理職も気を遣っていました。そして、彼女の周囲からこんな話を耳にします。
- 「村山と安藤、あやしくない?」
- 「木工室と音楽準備室ってさ……」
- 「飲み会のあと、いつも二人だけ一緒に帰っていく」
正直、二人が不倫をしている決定的な証拠は誰も持っていませんでした。

しかし、二人が“同じ敵(=西山先生)に目をつけられていた”ことは事実で、職員室の中で孤立気味だったことは共通していました。
私は同じバスケットボール部の顧問だったことから村山先生とは仲が良くなり、
「妻とは仲が良い」「娘が可愛くて仕方ない」と何度も聞かされていたので、噂は半信半疑でした。

■ 村山先生の“仕事ぶり”に尊敬が生まれる
翌年、学校は文科省の研究指定校に。村山先生が研究主任、私が副主任になり、さらに一緒に動くことが多くなりました。
そこで初めて知ったのが、村山先生の研究者としての優秀さです。
・文科省の指定研究員の経験
・教育論文の受賞歴
・探究を軸にした総合学習の構想力の高さ
遅くまで研究構想を練りながら、互いに色々な話をするようになります。
その流れで、村山先生はぽつりと口にしました。
「安藤先生には申し訳ないよ。俺と西山先生との確執のとばっちりを受けているからね」
話の脈絡上、突然名前が出てきたことに違和感を覚えました。その時、安藤先生のことは全く話題に上がっていなかったからです。
私はこのとき初めて “噂は本当かもしれない” と感じました。

■ 深夜22時の電話と、私の“痛恨の一言”
そして、私の10年以上経っても忘れられない、あの日が来ます。
その日は会議があり、部活はなし。普段遅い村山先生が珍しく 17時すぎに帰宅しました。
「今日は用事があってね。研究の要項のまとめ頼むね。」と言って帰って行ったので、よく覚えています。
安藤先生も、気づけば姿がありませんでした。
21時、22時……研究要項の担当部分をまとめていたので職員室に残っていたのは私ひとり。
そこへ電話が鳴ったのです。
普段なら出ません。ただ、受話器が目の前だったばかりに、反射で取ってしまいました。
「もしもし、○○中学校です」
『……私、村山の妻です。村山はまだそちらにいますか?』
落ち着いた、けれど異様に静かな声でした。
私は疲れで気が緩んでいたのか、絶対に言ってはいけない一言を言ってしまいます。
「村山先生なら……今日は17時すぎに学校を出られました」
言った瞬間、「しまった!」と背中が冷たくなりました。帰ったことは伝えても、わざわざ17時と言う必要はなかったからです。
『……そうですか。やっぱり。ありがとうございました』
そこで電話は切れました。
“やっぱり” の意味を考えるのが怖くなるような声音でした。

■ そして訪れた “静かな結末”
電話のあとも、何も変わりませんでした。ただ、私は電話のことを誰にも言えませんでした。
そして年度末の異動発表。
村山先生:他市へ異動(この地区では極めて珍しい人事)
翌年、安藤先生:退職 → 別市で非常勤へ
うすうす、何かがあったのだろうと思いました。しかし、それを確かめる術はありませんでした。
■ そして10年後、村山先生が語った“真相”
10年後、とある大都市の研究発表会の会場で、私は村山先生と偶然再会します。
ランチをご一緒することになり、村山先生は静かに事実を語りました。
・あの頃、家庭のすれ違いが限界だった
・職場でも西山先生との関係が苦しく、精神的に追い詰められていた
・安藤先生は同じように孤立し、自然と距離が縮まった
“共通の敵”を持つと距離が一気に縮まる。恋愛心理でよくある、典型的なパターン。
村山先生は離婚を経て、娘さんの高校卒業を待ち、少し前に安藤先生と正式に入籍したそうです。
驚いたのは、安藤先生のSNSには、この10年間いわゆる “匂わせ” が一度もなかったことです。私は安藤先生とFacebookで繋がっていましたが、結婚報告すらありませんでした。

そういう意味では、二人は二人なりに誠実だったのかもしれません。
そして私の胸に刺さったのは、あの深夜の電話の記憶。
“私の一言が何かの引き金になっていないだろうか?”いまでも、その一点だけは胸にしまったままで、誰にも話すことができていません。
■ 共通の敵が生む「いけない恋」の構造
職場での不倫は、もちろん推奨されません。
しかし心理学的には、以下のような“落とし穴”があります。
- 孤立した二人は結びつきやすい
- 共通のストレス源(今回は西山先生)があると心が寄る
- 家庭が不安定な時は判断が鈍る
- 相談相手への依存が恋愛感情に変わりやすい
教員は特に閉じた世界で働くため、この構造に飲み込まれた時に自分では気づきにくいものです。
どうか先生方も、“弱っている時こそ異性との距離感が大切”であることを思い出してください。
■ 次回予告
次回も職員室の行けない恋を紹介します。
HOW TO 教員の恋愛シリーズ⑨ 教務主任と初任者の禁断の恋
です。お楽しみに!
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