【40代教員の退職カウントダウン104:退職までのこり3年4ヶ月】
はじめに
教員の恋愛には、ときにドラマよりもドラマチックな展開があります。
今回紹介するのは、「最初の関係は最悪だったのに、気づけば結婚していた」という少女漫画のような恋の物語です。
登場するのは、山田先生(仮名・30歳)と森下先生(仮名・30歳)。
そして語り手である私は、当時35歳。二人とは近い距離で仕事をしていたため、今回の恋の“始まり”と“結末”のどちらも間接的に見届けることとなりました。
私は40代の小学校教務主任(担任兼務)で、2028年度末に正規教員を退職予定です。
※詳しくはこちら → 【私が退職しようと決意した具体的経緯】
最悪の出会い:「反山田連合」が生まれた日
山田先生は、関東の学校から採用試験を受け直して私の学校へ赴任してきました。
学び合いの研究論文で受賞歴もある実力者で、身長180cm超えの爽やかなイケメン。転任者挨拶の日は高学年女子のざわつきが止まらなかったほどです。

しかしその“自信の強さ”が、女性社会である小学校の職員室では裏目に出ます。
- 研究授業でのベテラン教師への細かな指摘
- 職員会議での堂々たる修正要求
- 自己流の授業スタイルを貫く姿勢
これらが“職員室のボス”と呼ばれていたベテラン女性教員の逆鱗に触れ、ほどなくして彼女を中心とした「反山田連合」とでもいうべき雰囲気が出来上がってしまいました。
その中心にいたのが森下先生です。

6年目の若手リーダーとして期待されていた彼女は、言葉が強く、姉御肌で頼りがいのある存在。そのためボス世代からの信頼も厚く、自然と反山田派の先頭に立ってしまったのです。
実際、私も森下先生から
「なんであんな高飛車な山田先生と仲良くできるんですか?」
「学び合いなんて、子どもがダメになりますよね?」
と直接言われ、対応に困ったことがありました。
最悪の相性。 口もききたくない。 必要最低限の会話だけ。
完全に“犬猿の仲”でした。

ボスの転勤と、職員室の構図の変化
山田先生が赴任して2年後、反山田連合のボスが転勤しました。
つまり、山田先生にとって最大の敵、森下先生にとっては最大の理解者がいなくなったわけです
※ちなみに私もこの年に転勤しています。この後の話は後に山田先生たちから聞いたエピソードです。
翌年、二人は偶然にも5年生の同じ学年で組むことになりました。加えて
- 山田先生 → 生徒指導主任
- 森下先生 → 児童会主任
どちらも学校の中心を担う大役を任されることになります。
森下先生のクラスには学校一の問題児が在籍しており、他校の児童とトラブルを起こすなど、生徒指導との連携が欠かせない状況でした。
尊敬のはじまり:問題児対応で変わった森下先生の“見方”
最初はお互い距離を置いていました。
しかし、問題児が他校児童と大きなトラブルを起こしたことを境に、状況は一変します。
その対応で、森下先生は山田先生の本当の力を目の当たりにしたのです。
- 事実確認の的確さ
- 保護者対応の落ち着き
- 学年全体を守る視点の広さ
森下先生はこう語っていました。
「初めて“あ、この人すごかったんだ”って思ったんです」
もちろん尊敬は、一瞬で恋の芽生えに変わるものではありません。
しかし、悪印象が強かった相手ほど好印象に転じやすい(心理学のゲインロス効果)ことはよく知られています。
二人の距離は、確実に縮まり始めていました。
共同作業が育てた“同志としての結びつき”
児童会担当になった森下先生は、新しい企画を次々に打ち出し、学校から高く評価されます。
その裏には、山田先生の助言や細やかなサポートがありました。

一方で山田先生も、森下先生が勝気な反面“繊細で不器用”な性格であることに気づき始めます。
- 一人で抱え込んでしまう
- アドバイスを求めるのが苦手
- 弱音を人に見せられない
「支えてあげたい」と思わせる人だった、と山田先生は言っていました。
さらに森下先生は、山田先生に教わりながら学び合いの授業にも挑戦します。
生き生きと学び合う子どもたちを見て、自分自身の授業観が変わったとも話していました。

山田先生や森下先生がチャレンジした学び合いについてはこちらの記事↓
【教員の教養シリーズ:西川純の「学び合い」とは?】
同じ目標に向かって協力すると、人は強く結びつくものです。
これは心理学で「共同作業による好意形成」として知られる現象で、恋愛のきっかけとしても非常に多いパターンです。
そして、気づけば恋に落ちていた
森下先生は山田先生を尊敬し、頼るようになりました。山田先生は彼女を支え、認める存在となりました。
反発の裏側には、実は惹かれやすい素質が隠れています。
- 初対面のマイナスが大きいほど
- その後のプラスの影響は強く働く
まさに恋愛心理学の法則通りの展開でした。
5年後の突然の連絡
私が学校を離れて5年後、山田先生から突然連絡が来ました。
「久しぶりに飲みに行きませんか?ちょっと報告があって」
この段階で私は、二人が恋愛関係にあることを全く知りません。
約束した居酒屋に入ると、山田先生の隣には森下先生。しかも二人そろって薬指に指輪。

その瞬間の衝撃は、今でも忘れられません。このストーリーはその時に聞いたものです。
「実は結婚しました」と照れ笑いをした二人は、かつて“反山田連合の中心”と“その敵役”だったとは思えないほど、とてもお似合いの空気をまとっていました。
現在の二人と、続いていく物語
年賀状によると、今年は第二子が誕生し、森下先生は子育て中。
山田先生は大学附属小学校の研究員となり、教育研究の世界で活躍しているようです。
あの頃、職員室で火花を散らしていた二人が、今こうして一つの家庭を築いている——
長く教員をしているからこそ見られる、教員ならではの恋の結末でした。
次回予告:HOW TO 教員の恋愛シリーズ 第3弾
——これはこれで、教員恋愛あるあるの代表格。お楽しみに。



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