休む勇気を持てない先生へ ― 罪悪感なしに休む方法

教員の健康を考える

【40代教員の退職カウントダウン91:退職まで残り3年4ヶ月】

はじめに

「体調が悪くても、授業があるから休めない」「自分が休んだら、子どもや同僚に迷惑をかけてしまう」

そんなふうに思って、無理をして出勤してしまう――。

先生たちの中には、ギリギリまで頑張ってしまう人が少なくありません。でも本当に、「休まないこと」がいい先生の条件なのでしょうか。

先日、長く付き合いのある後輩から「しばらく休むことになりました」という連絡をもらいました。軽度ではあるものの鬱だと聞きました。

彼は小学校で6年間勤務したあと、中学校に転勤して2年目。力のある若手で、周囲からの信頼も厚い先生でした。しかし、責任感が強く「期待に応えたい」という気持ちが先行してしまい、無理を重ねていたようです。

職場が違うとはいえ、彼の力になってあげられなかったことが心残りです。

後輩から「しばらく休むことになりました」という連絡

20年以上学校にいると、彼に限らず“無理をし続けた結果、長期休養が必要になった先生”を何人も見てきました。教務主任として伝えたいのは「短期間休むことは、まったく問題ではない」ということです。

むしろ、無理をして働き続けた結果、長期で休まざるを得なくなるほうが、学校にとっても子どもたちにとっても、そして何よりも自分自身にとって大きなダメージになります。

今回の記事は、彼の力になれなかった私自身の反省も込めて、いま無理をしている先生に少しでも届けばと思い、今の気持ちを綴りました。

私は40代小学校教務主任(担任兼務)、2028年度末に正規教員を退職予定です。
詳しくはこの記事をどうぞ→【私が退職しようと決意した具体的経緯


なぜ先生は「休めない」と感じるのか

多くの先生が「休めない」と感じるのには、いくつかの理由があります。

  • 「授業があるから代わりがいない」
    担任を持っていると、「自分しかできない」と思い込みがちです。
    子どもたちへの責任感が強い先生ほど、授業を任せることに抵抗を感じやすいものです。
  • 「他の先生に迷惑をかけたくない」
    職員室では、周りの先生が忙しく動いている姿を日々目にします。
    そんな中で、「自分だけ休むのは申し訳ない」と感じてしまうのは自然なことです。
  • 「自分が抜けると学校が回らない」
    責任感が強い先生ほど、この思い込みを抱えがちです。
体調は悪いけれど休めない、、、

けれども、学校はチームで動く場所。誰かが抜けても、他の誰かが『一時的には』カバーできます。わかってほしいのは――

あなたの「1日」は、誰かが代わりに担うことができる。しかし、あなたの「1ヶ月」をかわることは非常に難しいということです。

だからこそ、“無理をする前に休む”ことが、子どもや同僚、そして自分を守る一番の方法なのです。

無理をする前に休む!

教務主任として感じること

私はこれまで、若い先生もベテランの先生も、無理をして限界まで働き続ける姿を何度も見てきました。

「責任感が強いからこそ、休めない」――でも、その責任感が、自分を追い詰めてしまうこともあります。

だからこそ、こう伝えたいのです。

辛いときは休めば良い。ズル休みだっていいから仕事を忘れてリフレッシュして欲しい。

以前書いたブログでも告白していますが、私も若い頃ズル休みをしていました。もちろん罪悪感はありましたが、その「ズル」によって私自身の心の健康を保つことができたと思っています。
教員が倒れる理由は“忙しさ”ではない。― メンタルをすり減らす本当の原因

辛い時は休めばいい

「今日は無理です」と言えることが、チームにとって一番の誠実さです。助け合って離脱しないこと、それこそが本当の責任です。

1日休む勇気を持てる先生の方が、結果的に長く現場に立ち続けています。

私たち教務主任や管理職の仕事は、そうした「働き続けられる仕組み」をつくることでもあります。


罪悪感を減らす3つの考え方

① 「休む=自己管理の一部」と考える

体調を崩すのは怠けではありません。

休むこともまた、「次の日に向けての準備」です。

学校は先生の健康あってこそ成り立ちます。休むことは「迷惑」ではなく、仕事の一部と捉えてください。

休みことだって仕事の一部

② 「代わりができる仕組み」を日常で整える

急な欠勤の不安は、「自分しか知らないこと」が多いことから生まれます。

日ごろから次のような工夫をしておくと、安心して休めます。

  • 学級日誌や連絡帳に情報を残しておく
  • 教材やプリントを共有フォルダに保存
  • 子どもたちに「誰が教えてもできる活動スタイル」をつくる

これは“休む準備”ではなく、“チームで支える準備”です。

子どもたちに「誰が教えてもできる活動スタイル」をつくる

③ 「自分が休むことで、職場が優しくなる」

「自分が休むなんて申し訳ない」と思うかもしれません。

でも、あなたが勇気を出して休むことは、周りの先生が休みやすくなる第一歩です。

「○○先生も無理せず休んでいいんだ」と思える職場は、結局のところ、長く続けられるチームになります。


休むときに伝える言葉はシンプルでいい

体調不良で休むとき、つい気を使って言葉を選びすぎてしまうものです。

けれども、短く・簡潔に伝えるだけで十分です。たとえば、次のような言葉で問題ありません。

  • 「体調が悪く、今日は休ませてください。」
  • 「無理をすると長引きそうなので、お休みをいただきます。」

言い訳を探したり、状況を細かく説明したりする必要はありません。

淡々と伝えるだけで大丈夫です。

そもそも年次有給休暇(年休)は、法律で保障された労働者の権利です。

以下のポイントを知っておくと、安心して休むことができます。

🌿 年休取得の基本ポイント

  • 取得の原則:  年休は労働者の権利であり、学校(雇用者)が理由を問わず拒否することはできません。
  • 休みの理由:  体調不良や私用など、理由を説明する義務はありません。
            ※ただし、職場運営上の連絡として簡潔に伝えるのはマナーです。
  • 時季指定義務:  使用者(自治体・学校)は、10日以上の年休が付与された職員に対して、年5日間の取得させることを義務づけられています(労働基準法第39条)

「迷惑をかけたくない」気持ちは大切ですが、休むことも立派な仕事の一部だと思いましょう。

休むことも立派な仕事の一部

「離脱しないこと」が最大の責任

学校の仕事はチームプレーです。

一人が全力で走り続けるよりも、全員が長く立ち続ける方がはるかに強い。

「今日1日を休む」ことは、「明日も子どもたちの前に立ち続けるための選択」です。

どうか、休むことを恐れないでください。休む勇気は、先生としての覚悟の証です。


おわりに

教員という仕事は、「人を育てる」という尊い使命を背負っています。

けれど、その使命感が強すぎると、気づかないうちに自分を追い込んでしまう。

私は教務主任として、「先生たちが離脱せずに、笑顔で続けられる職場」をつくりたいと願っています。

もしあなたが今、疲れを感じているなら、どうか思い出してください。あなたの健康は、学校にとっても大切な資源です。

だから、安心して休んでください。それが、いちばんの責任の果たし方です。

冒頭の後輩が1日でも早く元気になってくれることを祈っています。

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